三菱電機は5月17日、人工衛星用のアンテナを、衛星に搭載した3Dプリンタによって宇宙空間で製造する技術を開発したと発表した。 また同技術の開発に際して、真空中での適切な粘度と紫外線による硬化安定性を持つ特殊な樹脂と、小型衛星にも搭載でき、サポート材が不要なフリーフォーム積層造形を真空中で可能にする3Dプリンタを開発したとした。
従来の人工衛星は政府機関が主導する大型のものがほとんどであったが、近年は研究機関や民間企業が主導する数十cmサイズの超小型衛星も登場し、民間事業者による人工衛星などのビジネスが立ち上がりつつある。
現在の人工衛星に搭載するアンテナは、高利得かつ高帯域幅であることが求められるため、開口を大きくする必要があるという。しかしこれまでは、打ち上げロケットのフェアリング(流線形の覆い)や人工衛星のサイズによる制約を受け、あらかじめ格納可能な大きさで整形するか、折りたたむ形で格納し軌道上で展開する方法がとられていた。また、打ち上げ時や軌道投入時の振動や衝撃に耐えられる構造とする必要もあった。
今回、三菱電機は、真空中で適切な粘度を保ち紫外線による硬化安定性を持つように配合された紫外線硬化樹脂を開発。この樹脂を3Dプリンタで押出成形し、太陽光の紫外線で硬化させることで、サポート材が不要なフリーフォーム3D積層造形が、真空中でも低消費電力で製造可能になったとした。
この技術により、ロケットのフェアリングや人工衛星のサイズにかかわらず、数十cmの超小型衛星であっても開口の大きなアンテナを搭載することが可能となるほか、振動や衝撃などを考慮したアンテナ構造や、アンテナ展開用の部品も不要となるため、人工衛星の軽量化や打ち上げコストの低減にも貢献できると同社では説明している。