ここ数年、企業はDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組まないと、競争から取り残されるといわれてきた。そして、「データは企業の資産」「DXはデータ活用から」という認識の広まりとともに、DXの具体的な取り組みの最初の一歩として、注目を集めているのがデータ活用である。とはいえ、データ活用が思うように進んでない企業も多いのではないだろうか。
日本企業において、身近でありながら、価値の高いデータに名刺がある。コロナ禍において、対面で名刺交換をする機会は減ってしまったが、新型コロナウイルス感染症が登場する前は、名刺交換から日本のビジネスシーンは始まっていた。
そこで今回、CDP(カスタマーデータプラットフォーム)を提供し、「Treasure Data CDP for sales」を自社で活用するトレジャーデータの取締役 マーケティング担当 堀内健后氏とセールスデベロップメントマネージャー 旗手梨香子氏に、同社における名刺データの活用について聞いた。
名刺データがなくてはビジネスが回らない
米国法人は2011年、日本法人は2012年に立ち上がったトレジャーデータではほぼ創立当初から、名刺管理サービスを導入していたという。日本では、名刺管理サービスのアーリーアダプターといえよう。
名刺管理サービスを導入した背景について、堀内氏は「顧客管理を行う最小限の仕組みとして、名刺管理サービス、SFA、MAの導入は、シリコンバレーのSaaS企業においてはデファクトスタンダードでした。この3つの組み合わせは、最小限の労働力で最大のパフォーマンスを出すという点でテンプレートとなっていました」と語る。
堀内氏が語るように、トレジャーデータでは、名刺管理サービスにSFAのSalesforceとMAのMarketoを連携させて活用している。営業が取得した名刺をデータとしてサービスに取り込み、そのデータをインサイドセールス、マーケティングが活用する。
インサイドセールスを統括する旗手氏に名刺をデータとして活用しているメリットを聞いたところ、ちょっと困った顔をしていた。というのも、トレジャーデータのビジネスでは、名刺データはあって当然のモノであり、言い方を変えると、ないとビジネスが回らないモノだからだ。
堀内氏も、「BtoBビジネスのマーケティングやインサイドセールスにおいては、顧客情報があって初めて始まるところはありますね」と語っていた。
名刺データの統合によりさまざまなマーケティング活動が可能に
コロナ禍において、名刺交換の機会が減った今、資料をダウンロードする際のWebフォームの入力、セミナーへの登録、オウンドメディアへの会員登録などによって、顧客データを取得しているそうだ。こうしてトレジャーデータが10年かけて取得した顧客データは25万に達しているという。
トレジャーデータでは、集めた名刺データや顧客データを統合して、メールマーケティングやウェビナー、事例コンテンツの案内に活用している。
旗手氏は、データが電子化されているメリットとして、セグメントが詳細に行えることを挙げた。メールマーケティングの場合、企業名、部門、役職などで絞り込んで、メールを送信することができる。これにより、コンテンツとの関連性が低い人にメールを送信するリスクの低減が実現される。
また、各人のWeb閲覧や動画視聴、セミナー参加・申込履歴などあらゆる行動履歴を統合できる環境も整備されているので、行動データを掛け合わせて、よりきめ細かなセグメントも行えるという。
これにより、興味・関心度合いの顧客ステージをファネルで把握した上で、各ステージに応じた最適なコンテンツを、最適な人に届けることが可能となっている。
名刺を電子データ化し、顧客データをデジタルで管理しているからできることだ。これらのデータは営業部門が顧客に個別アプローチする際にも活用することができる。
さらに、トレジャーデータでは、名刺データとその企業の情報を連携して、表示するという仕組みも構築している。名刺には、企業や部署の名称程度しか記載されていないが、企業情報データベースと連携することで、売上などの企業に関するさまざまな情報と合わせて可視化することが可能になる。
旗手氏は、「私たちもまだ試行錯誤を重ねながら取り組んでいる途中です。まだ顧客データの活用に取り組んでいない企業も、まずは社内で使えるデータを棚卸して、すぐに使えるところは活用を開始し、足りないところはデジタルマーケティングに注力してデータ収集を始めれば施策の可能性が広がると思います」と話す。