地球に落ちてきた隕石から、生物の遺伝子に欠かせない核酸塩基の主要な5種類全てを初めて検出した、と北海道大学などの国際研究グループが発表した。40億年ほど前の地球に隕石などの天体が飛来し、生命の材料が届いたとの説がある。その検証や、宇宙で核酸塩基ができた仕組み、分子が変化して遺伝の機能が生じた過程の解明に役立つ成果となった。
隕石には、鉄や石でできたさまざまなタイプがある。石のタイプの中でも炭素質隕石は太陽系最古のもの。タンパク質の成分のアミノ酸など、生命を構成する有機化合物が含まれており、これらが地球に届いて生命の材料となった可能性が指摘されている。
生物の遺伝情報を担う核酸にはデオキシリボ核酸(DNA)とリボ核酸(RNA)があり、両者を合わせるとウラシル、シトシン、チミン、アデニン、グアニンの主要5種類の塩基を含んでいる。研究グループはこれまでの実験で、太陽系ができる前の宇宙空間で、光化学反応によってこうした核酸塩基などができた可能性があることを示していた。ただ実際の炭素質隕石からは、5種類のうちウラシル、アデニン、グアニンしか見つかっていなかった。
そこで研究グループは、1969年にオーストラリアに落下した「マーチソン隕石」など3つの炭素質隕石に対し、感度を高め、抽出法を改善した独自の分析法により核酸塩基を探した。その結果、マーチソン隕石から主要全5種類の核酸塩基を初めて検出。主要でない“脇役”も含めると、初検出の10種類を含む18種類に及んだ。ほかの2つの隕石からも今回、それぞれ3種類、4種類の主要核酸塩基を検出した。
地球に生命が生まれる前、核酸を作るのに必要な成分が宇宙から届いたことや、それが遺伝機能の始まりにつながった可能性を考える上で、重要な成果となった。
研究グループは探査機「はやぶさ2」が2020年に地球に持ち帰った炭素質小惑星「リュウグウ」の物質や、米国の探査機「オシリスレックス」が来年9月に持ち帰る同じく炭素質の小惑星「ベンヌ」の物質も、独自開発した分析法で調べる計画という。
研究グループの北海道大学低温科学研究所の大場康弘准教授(宇宙地球化学)は「生物学の研究者と共に、生命の起源にはどんな材料が必要だったのか、それらが隕石の中にあるのかなどについて理解を深めていきたい。また、宇宙で核酸塩基ができた詳しい仕組みを解明したい。小惑星の物質に核酸塩基が含まれていれば、非常に重要な発見となる」と述べている。
研究グループは北海道大学、海洋研究開発機構、九州大学、東北大学、米航空宇宙局(NASA)で構成。成果は英科学誌「ネイチャーコミュニケーションズ」に4月27日に掲載された。
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