地球サイズの電波望遠鏡を構成することで、ブラックホールシャドウごく近傍の世界を見ることを目指した国際共同研究プロジェクト「イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)」の研究チームは5月12日、天の川銀河の中心にある巨大ブラックホール「いて座A*(エースター)」の撮影に成功したことを発表した。
いて座A*は、地球から約2万7000光年先の天の川銀河の中心にあるブラックホール。太陽の約400万倍の質量だが、巨大ブラックホールの中では最軽量級のものとされている。
これまで、天の川銀河の中心領域には、非常に重く、コンパクトで目に見えない天体「いて座A*」の周りを星々が回っていることが観測されており、間接的な証拠からブラックホールであることが示唆されていたが、これまで実際に観測されたことはなく、その観測が待ち望まれていた。
今回、2017年4月に撮影された画像を、周辺のガス運動を考慮した新たなデータ処理手法を用いて解析することで、ブラックホールシャドウを確認。リングの直径は約6000万kmで、これはアインシュタインの一般相対性理論の予言とよく一致しており、ブラックホールであることが示されたとしている。
今回の研究成果は、「The Astrophysical Journal Letters」の特集号に6編の主論文(主論文1、主論文2、主論文3、主論文4、主論文5、主論文6)ならびに4編の主論文を補う公認論文(公認論文1、公認論文2、公認論文3、公認論文4)として、2022年5月12日付で出版された。また、これらの論文に関わった著者は300名を超すEHTメンバーならびにEHT外部研究者たちで、日本の研究機関に所属するEHTメンバーは13名、米独台中の研究機関に所属する日本人EHTメンバーが8名、日本国内のEHTメンバー外の研究者5名が参加しており、主に日本として望遠鏡と観測運用、装置開発、データ較正・画像化・画像解析、東アジアVLBIによる多波長準同時観測、理論・シミュレーションとの比較などで貢献したという。
なお、研究チームでは、今回の観測成果について、一般相対性理論のさらなる検証や、我々が住む天の川銀河の理解に向けた大きな一歩であるとコメントしている。