パナソニックホールディングス(HD)は5月11日、持株会社のパナソニックコネクトと2021年に買収を完了した米ブルーヨンダーが進める、製造業や小売業向けのサプライチェーンマネジメント(SCM)事業の株式上場に向けた準備を開始すると発表した。ブルーヨンダーを中心として新会社を設立し、株式上場を目指す。R&D強化やM&A投資を積極的に実行し、資本市場の力を借りて同事業のグローバル成長を加速させる。
同日開催された記者会見に登壇したパナソニックHD 代表取締役社長 CEOの楠見雄規氏は「あまり決まっていない段階での発表だが、上場するのだという『腹ぐくり』をした。この業界は成長スピードが速い。タイムリーな意思決定が必要だと考えた」と、株式上場に向けた狙いを説明した。
パナソニックHDは2021年までに累計8633億円を投資して、ブルーヨンダーを完全子会社化した。ブルーヨンダーはAI(人工知能)を活用し、需要・供給の変化をリアルタイムに把握し、現場作業の最適化や省人化を図るサービスを製造業や小売業向けに展開している。顧客は、食品・日用品大手の英ユニリーバなど欧米企業を中心に世界で3,000社を超えている。
SCM事業を手掛ける新会社では、パナソニックグループの現場ソリューションをかけ合わせながら、SaaSソリューションの差別化を図り、欧米市場においてSaaSビジネスをさらに拡大していく。
具体的には、パナソニックHDのセンシング技術、産業に特化したエンジニアリング、現場最適化ソリューションなどにより得られる現場データをブルーヨンダーのSaaSプラットフォームに取り込み、リアルタイムに現場への実行指示につなげるといったフィードバックループを構築していく。ブルーヨンダーにとって顧客が少ない日本市場の開拓も急ぐ。
パナソニックHDはSCM事業の上場会社を同社が議決権の過半数を保有する重要な連結子会社と位置付け、上場会社の組織構成および資本構成を検討する。パナソニックコネクトの現場ソリューションの関連事業、および技術研究開発本部の関連領域などの組織から構成される予定。なお現時点で時期や市場は未定だ。