ドイツ発のオフィス家具メッセ「オルガテック東京2022」が4月26日から28日にかけて、東京ビックサイト(南1・2ホール)で開催された。「オルガテック」は、ケルンメッセが主催する、ドイツ・ケルンで定期的に開催されているオフィス家具の見本市で、今回、同イベント初の海外進出として日本で開催された。オカムラやイトーキ、内田洋行、コクヨをはじめ、国内と欧州から80以上のブランドが参加し、会場は大勢の人で賑わっていた。

  • 「オルガテック東京2022」会場の様子:東京ビックサイト(南1・2ホール)

    「オルガテック東京2022」会場の様子:東京ビックサイト(南1・2ホール)

会場を歩いていると、よく目にするものがあった。それはコロナ禍の影響でWeb会議が増え、それに伴い需要が増している「個室Web会議ブース製品」だ。筆者の肌感覚では、出店してる企業の7割程度が個室Web会議ブース製品を展示していたように思える。パッと見た感じではそれぞれの製品に差が感じられず、企業はどのように差別化をしているのかが気になった。ある出展企業の担当者は、「正直、機能に差はほとんどない。材料が国産か外国産か、値段が安いか高いかで検討している人がほとんどだ」と吐露。

いや、そんなはずはない……。こんなにたくさんの企業が出展していて、全部がほぼ同じ機能だとしたら展示会の意味がない。そこで、探求心にかられた筆者は個室Web会議ブース製品を見つけ次第、その担当者に話を聞いた。

「CONBOXシリーズ」は調音材で防音?

東京鋼鐵工業が展示していた「CONBOXシリーズ」は、音の反射にこだわっていた。周辺の除去したいノイズだけを軽減し、必要な音をきちんと残すことができるという「調音材」を内蔵した不思議なパネルを使用しており、人の声が聴きやすくなる空間を設計している。

  • 東京鋼鐵工業が展示していた「CONBOXシリーズ」

    東京鋼鐵工業が展示していた「CONBOXシリーズ」

まさに「小声で話せる空間が作れる」(製品担当者)といい、天井がなくても会話が外部に漏れないというのがうたい文句だ。

具体的には、母音を区別するのに大切な音を反射する独自の素材を使っている。同社の調音材は、500ヘルツと1,200ヘルツおよび2,900ヘルツ付近の周波数を持つ音を強く反射する。この三つの周波数が「あ」などの音声母音を聞き取るのに重要な周波数帯だという。

  • 母音を区別するのに大切な音を反射する独自の素材

    母音を区別するのに大切な音を反射する独自の素材

そして、壁に当たった一次反射音が直接音と干渉しないように微弱な反射音にできるというのだ。また、この微弱な反射音を遅延させることで、実際の部屋より広い空間と同じ音場にできる。

  • 調音するメカニズム

    調音するメカニズム

この調音材は個室Web会議ブース製品以外にも、パーティションやソファ席、壁などにも取り付けることが可能で、同社はさまざまな防音に特化したオフィス家具を展開している。

「TELECUBE」はアプリとの連動で予約管理

オカムラが提供する「TELECUBE(テレキューブ)」は、高い遮音性・防火性を持ち、内部には換気ファンや人感センサーを備えており、快適な空間を実現している個室Web会議ブース製品だ。

  • オカムラが提供する「TELECUBE(テレキューブ)」

    オカムラが提供する「TELECUBE(テレキューブ)」

  • 換気ファンと人感センサー

    換気ファンと人感センサー

一番のウリは、スマートフォンから予約できたり、顔認証でロック解除できたりと、ITをかけ合わせている点だという。

  • 顔認証でロック解除

    顔認証でロック解除

同社が提供している、働き方のデジタル化を実現するサービス「WORK x D(ワークバイディ)」と連携することで、ブースの予約や利用状況の確認がスマートフォンの操作一つでできる。

  • スマホのアプリからブースの利用状況が確認できたり

    スマホのアプリからブースの利用状況が確認できたり

  • ブースの予約ができたりする

    ブースの予約もできたりする

  • 予約時刻から10分経過すると自動でキャンセルする仕組み

    予約時刻から10分経過すると自動でキャンセルする仕組み

1人用から4人用まで幅広く製品を展開。まだ未発売だが、有効的にスペースを活用できるようにと開発されたスライド式ドアの「TELECUBE」も展示されていた。

  • ドアがスライド式の「TELECUBE」。前後にドアが開閉しないため省スペースで設置できる

    ドアがスライド式の「TELECUBE」。前後にドアが開閉しないため省スペースで設置できる

Web会議ブースがミニスタジオに!?

イトーキの展示ブースを覗いてみると、個室Web会議ブース製品とある製品を組み合わせたソリューションを紹介していた。その製品というのが「ミニスタジオ」だ。

2022年8月発売予定のWeb会議ブース「ADDCELL(アドセル)」と、同7月発売予定のウェビナーなどで活用できるミニスタジオ「on-studio(オンスタジオ)」が組み合わせて展示されていた。

  • イトーキが参考出展していたミニスタジオ

    イトーキが参考出展していたミニスタジオ

ADDCELLは、見た目はいたってシンプル。調光・調色可能なダウンライトと簡易的な消火設備が設置されており、オプションでモニター取り付け金具でモニターを設置でき、鍵付き対応も可能だ。これといって性能における他製品との差別化は感じられなかったが、このon-studioとの組み合わせが面白い。

on-studioは自社のちょっとしたスペースをスタジオとして利用でき、訴求力のあるプレゼンテーションができる。まず、ディスプレイの内部にハーフミラーとカメラが内蔵されており、プレゼンターが投影資料や遠隔参加者を見ながらカメラ目線で話すことが可能だ。

  • カメラ目線で画面に映るスライドを見ながらプレゼンテーションができる

    カメラ目線で画面に映るスライドを見ながらプレゼンテーションができる

また、話し手と資料を高解像度に合成することが可能で、身振り手振りを組み合わせたプレゼンテーションができる。さらに手元の書画カメラにより、机上資料に書き込んだり、製品のデモンストレーションもでき、言葉だけでは説明しにくい内容もわかりやすく伝えることが可能。

  • 専用のカメラで

    専用のカメラで

  • 手元にある資料を投影することも可能

    手元にある資料を投影することも可能

ADDCELLと組み合わせずに単体で利用することもでき、自社のニーズにあった運用ができそうだ。

新型コロナウイルス感染症の影響もあり、オンラインを活用した働き方が浸透してきた。記者会見などもウェビナーで行われるようになったが、ウェビナーのライブ配信のためにスタジオを毎回レンタルするのは時間と経費がかかるだけでなく、急な対応ができないといった課題を多くの企業が抱えているという。

両製品を導入するとなると初期費用のコストは大きいが、今の時流に合わせて自社内でスタジオを運営できるようにすることは必要な投資かもしれない。

各メーカーが特色を出すWeb会議ブース製品

そのほか、デザインに全振りしているTRENCHの「Serenity」や、「100人乗っても大丈夫」で有名なイナバインターナショナルの「BizBreak」といった商品が目立っていた。価格をオープンに設定している製品が多い中、BizBreakは定価設定で値段も手ごろだ。

  • デザインに全振りしているTRENCHの「Serenity」

    デザインに全振りしているTRENCHの「Serenity」

  • お洒落だ……

    お洒落だ……

  • 定価設定で低価格のイナバインターナショナル「BizBreak」

    定価設定で低価格のイナバインターナショナル「BizBreak」

「BizBreak」の製品担当者に「なぜ安いのか」と聞いたところ、「すでに物置のメーカー企業として培ってきた居室用ブースの開発ノウハウを持っていた。開発済みの部材を利用しているので、開発コストがかからず安く作ることができる」とその理由を教えてくれた。

さまざまなWeb会議ブース製品を見て回ったが、確かにそこまで性能に違いはなかった。しかし各メーカーは付加価値を加えたソリューションを提供していた。集中力に欠けている筆者。実際に自社オフィスに導入してもらい、オンオフをすぐに切り替えられる優秀な編集者になりたいものだ。