ソフトバンクは5月11日、2022年3月期の連結業績(2021年4月1日~2022年3月31日)を発表した。売上高は前年比9.3%増の5兆6,906億円、営業利益は同2%増の9,857億円、純利益は同5%増の5,175億円だった。4期連続で売上・利益ともに過去最高を達成した。一株当たりの配当は期初予想通りの年間86円になる予定。

同日開催された記者会見に登壇したソフトバンク 代表取締役 社長執行役員 兼 CEOの宮川潤一氏は「2021年度は悪天候の経営状況だったが、無事に継続して過去最高益を達成できた」と胸をなで下ろした様子を見せた。

  • ソフトバンク 代表取締役 社長執行役員 兼 CEOの宮川潤一氏

    ソフトバンク 代表取締役 社長執行役員 兼 CEOの宮川潤一氏

事業別に見ると、傘下のヤフー・LINE事業と法人事業が大きく成長しており、営業利益はヤフー・LINE事業が17%増、法人事業が19%増を達成。一方で、通信料金の値下げの影響により、コンシューマ事業の営業利益は3%減。770億円にも及ぶ通信料金値下げの影響を、モバイル契約数増加によるコスト削減で浮いた578億円で補った格好だ。

2022年度は売上高5兆9,000億円(前年比4%増)、営業利益1兆円以上(同1%増以上)、純利益5,300億円以上(同2%増以上)を見込んでおり、「5期連続で過去最高益を目指す」(宮川氏)という。

同社は2022年3月に5G(第5世代移動通信システム)ネットワークの人口カバー率90%を達成しており、2022年度は5Gに継続して集中投資する予定。年間の設備投資に4,300億円(8%増)を費やし、需要に応じたスポット設計も強化していく。それと同時に、調整後フリー・キャッシュ・フロー6,000億円(3%増)も狙う。

また、宮川氏は「通信料値下げによる影響は2022年を底に大幅に縮小する見込みだ。2023年度はビジネス成長で増益を目指す」と、2023年度以降の考えも示した。

  • 通信料値下げによる減益影響は2022年度を底に大幅に縮小

    通信料値下げによる減益影響は2022年度を底に大幅に縮小

2023年度も通信料金値下げの影響がマイナス500億円ほどあるとのことだが、固定費の削減によるプラス500億円で相殺できる見込み。同社の過去の大型設備投資の償却が終了し、償却費が縮小フェーズに入り、3G、PHS、ADSLのサービス終了に伴うネットワーク運用コストの削減が予想されるという。

  • 2023年度はビジネス成長で増益を目指す

    2023年度はビジネス成長で増益を目指す

  • 2023年度以降の固定費の削減

    2023年度以降の固定費の削減

2022年度までの集中投資で5Gのエリア展開も一段落するとしており、設備投資も2023年度以降は3,300億円程度と1,000億円削減する方針だ。フリー・キャッシュ・フローに関しても6,000億円水準を安定的に創出していくとのこと。

  • 設備投資も1,000億円削減

    設備投資も1,000億円削減

堅調に成長している法人事業に関しては、今後、企業規模に応じた戦略でビジネスを拡大していくという。ソフトバンクは、国内に928社存在する大企業(売上高1,000億以上の上場企業)のうち94%を顧客にしている一方で、約386万社存在する中堅・中小企業(売上高1,000億未満の企業)は約10%しか顧客にできていない。企業規模問わず1社当たりの取引額を拡大させるとともに、中堅・中小企業の顧客数の拡大を急ぐ。

  • 法人事業は今後、企業規模に応じた戦略でビジネスを拡大

    法人事業は今後、企業規模に応じた戦略でビジネスを拡大

大企業市場に関しては、AI需要予測サービス「サキミル」や、高精度測位サービス「イチミル」などの自社開発ソリューションを拡充し、課題解決型の複合提案で1企業あたりの収益を拡大させる。また、アスクルやPayPayなど中小企業層に強いグループ各社との連携を強化し、6.8兆円規模と見込まれている中堅・中小企業のIT関連市場(IDC Japan調査)を積極的に開拓していく考えだ。

さらに宮川氏は、傘下の電子決済サービス企業であるPayPayを2022年度以降に連結子会社化する方針を明らかにした。ソフトバンクは現在、PayPayを持分法適用会社としており、25%出資している。その他の出資比率は親会社のソフトバンクグループが50%、子会社のZホールディングスが25%。「保有する優先株を転換する形でPayPayを子会社化する」(宮川氏)

スマホ決済サービス「PayPay」は21年度の決済取扱高が5兆4,000億円(前年比67%増)を突破した。累計登録ユーザー数は4,679万人(同23%増)で、決済回数も36億回と78%増加した。売上高は前年比1.9倍の574億円と急成長している。

  • 「PayPay」決済取扱高が5兆円を突破

    「PayPay」決済取扱高が5兆円を突破

PayPayの今後の取り組みに関して、宮川氏は「事業の3層に分け高収益を目指す」と説明。「決済手数料」「加盟店向けサービス」「金融サービス」の3層に分け、効率的な事業展開を図る。決済手数料に関しては、利便性向上を図り決済取扱高を継続して拡大を図る。2022年2月に発表した後払い機能の導入により、決済回数だけでなく決済単価の上昇も見込む。

  • 「PayPay」事業の多層化により高収益を目指す

    「PayPay」事業の多層化により高収益を目指す

PayPayにおいては、決済手数料というベースの収入に加え、クーポン手数料やスタンプカード手数料といった付加価値サービスの増収も目指す。また、個人向けローンや保険、資産運用・ポイント運といったグループ内の金融サービスとの連携も強化していく考え。

「PayPayはまだ赤字だ。さまざまな取り組みを通じてコマース、メディア、金融、決済を一本化し、経済圏を拡大させていく」(宮川氏)