野村総合研究所(NRI)は、5月9日、第334回目となるNRIメディアフォーラムを開催し、増加する「潜在的孤独」をメインテーマに、コロナ禍の生活の変化と孤独に関する調査報告を行った。
既婚者や若者にも蔓延する「孤独感」
NRIでは、2021年2月に日本に世界で2番目となる「孤独・孤立対策担当大臣」が誕生したことをきっかけに、同年5月から日本の孤独にまつわる調査を行っているのだという。
今回行われた「新型コロナウイルス流行に係る生活の変化と孤独に関する調査」は、3月23日~25日にかけて、全国の20代から80代の男女2,209名を対象として行われたもの。
調査の結果として、全ての性・年代で1年前より孤独を感じる割合が増加していることが分かっているという。
特に増加の理由として顕著だったのは、新型コロナウイルスの流行で、20~40代の男女のうち半数が「新型コロナウイルスが流行する前と比較して、孤独を感じることが多くなった」と回答したという。
また、NRIが注目しているのは、「既婚者」「学生」のデータだ。今までは、一般的に誰かと一緒にいる機会の多いこの属性の孤独感は薄いと考えられていたが、既婚者の41%、学生の58%が「日常において孤独を感じる」と回答している。
特に20代の回答では、「孤独スティグマ(汚名)」の意識が強く感じられ、「自信の孤独感について人に知られたくない」「相談することで人に迷惑をかけたくない」と考えている層が多いことも分かったという。
孤独の解決に必要なのは「家族以外」の居場所
NRIは、以上のような調査結果を受けて、「家族以外に居場所を作ること」を解決策として提案している。
この理由として、「孤独を感じているときに相談したい相手」の質問で、深刻度が低い層は「配偶者」「父母」「子ども」と家族に票が集まっているのに対して、深刻度が高い層は「友人・知人」「同僚・職場の人」「相談員・カウンセラーなどの専門家」と家族以外に票が集まる傾向にあるのが分かったことが挙げられるという。
この結果の背景には、深刻度の高い孤独の原因が家族にある場合と、親密な相手に心配をかけたくない場合の両面がある可能性が考えられ、特に男性の場合は、家族に自分の孤独感を知られることを避ける傾向にあるとのことだ。
そのため、NRIは、孤独を感じている人の中でも、利用状況が低い水準にとどまっている相談支援をより積極的に周知していくことによって、利用者数を増やすことができると考えている。 特に今まで孤独を抱えている割合が少ないとされていた既婚者や学生などの「潜在的孤独」を抱える層に、この相談支援を普及させていきたいという。
NRIの坂田氏は、孤独を感じやすい若者が「外出」「学業・仕事」「家事・育児」「人とのコミュニケーション」に対する意欲を減退させることは、長期的な視点で見ると、孤独感は日常生活におけるさまざまな経済的、社会的活動の意欲を減退させる可能性があると述べ、「孤独感を解決しなくてはいけない」と警鐘を鳴らしていた。