国内4店舗目となる体験型ストア「b8ta Koshigaya Laketown」が4月27日、越谷レイクタウンの「イオンレイクタウンkaze」(埼玉県越谷市)内にオープンした。コロナ禍の影響で米国の「b8ta」全23店舗が閉店している一方で、日本における「b8ta」は、新宿、有楽町、渋谷、そして今回の越谷と店舗数を拡大し、成長を続けている。
新店舗はどのような特徴があるのだろうか。実際に同店舗に訪れたので、店内の様子をお届けしたい。
定着しつつある「売らない店舗」
b8taは2015年にサンフランシスコで創業した、RaaS(Retail as a Service:体験としてのサービス)を実現する体験型ストア。同店舗は売ることを主目的としておらず、オンラインのEC店舗に出品する場合と同様の感覚で、オフラインへの出品が行える独自のプラットフォームを持つ。AIカメラやセンサーなどが店内に張り巡らされており、買い物客の行動分析結果を出展企業にフィードバックできる点も強みだ。
b8ta Japan CEOの北川卓司氏は「売ることを主目的としない店舗は国内で定着しつつある。実店舗の存在価値が問われ、コロナ禍でさらにその流れが加速している」と説明した。b8taが日本市場での草分けとなり、その後丸井グループやそごう・西武、高島屋などが次々と「売らない店」に挑戦している。
ファミリー層向けの商品が多数
新たにオープンした「b8ta Koshigaya Laketown」の全体面積は53.87坪で、展示スペースは49センチメートルx98センチメートルと、幅が通常の2倍となっている。出品料は月額30万円と従来店舗と変わらないため、出品料は実質半額になっている。渋谷店同様、可動式の什器を使用しており自由にレイアウトを変更することが可能。
越谷市には600万人以上もの商圏人口がある。主な居住者の年齢層も約35~54歳と幅広く、越谷レイクタウンには年間約5,000万人の来客があるという。コロナ禍前である2019年のディズニーリゾートの入園者数が約2,900万人ということを考慮すると、多くの人が同施設に足を運んでいることが分かるだろう。
「b8ta Koshigaya Laketown」は30代から40代のファミリー層をメインのターゲットとし、子供向けの知育玩具や、家庭用調理器具・家電などさまざまな全46種の商品が並ぶ。
日本初出品やオフライン初の商品・サービスも展示されており、試飲試食ができる食料品、レンタル可能な家電製品などが注目を集めていた。
注目のサービスの一つが、ドイツ発で日本で初出品となるミールキット宅配サービス「HelloFresh」だ。世界17カ国で展開されている同サービスは約10億食のミールキットを約720万人のユーザーに届けている。アジア初の国として2022年4月、日本に本格上陸した。
同サービスの売りは、手軽かつヘルシーで種類が豊富な点だ。アプリから登録、スキップ(今週は届かないようにする設定)、解約がボタン一つで可能で、自宅の玄関まで食材が届く。食材は人数分に合わせて計量されており、調味料もパックに入った使い切りのものが入っている。また平均9種類の材料を使ったバランスの取れたレシピを同封する。
最大の特徴がレシピの豊富さだ。毎週更新される10種のメニューは最短でも6週間先まで異なり、和食だけでなく、グローバル展開を生かした世界のメニューを日本用にアレンジしている。なお「b8ta Koshigaya Laketown」には、初回3回分の注文が合計5,500円安くなるクーポンが配布されている。
初挑戦となるLIVEキッチン
さらに、「b8ta Koshigaya Laketown」の注目したいポイントは、LIVEキッチンを常設している点だ。キッチン家電を利用し、実際に簡易的な調理ができるキッチンを用意した。まずはスタッフによる調理のみだが、今後は予約制でお客も調理できる環境の準備を進めている。
活用しているキッチン家電は、レンタルサービス「Rentio」を展開するレンティオが扱う商品。同サービスはカメラや家電を中心に約3,000種類のアイテムを必要な時に必要な間だけ使えて、気に入れば返却せずに差額分を考慮した金額で購入できるサービス。月間利用者数は約8万5,000人。
LIVEキッチンには、電気圧力鍋、食洗器、セカンド冷蔵庫、オーブンレンジ、オーブントースター、フライオーブン計6種のレンタル可能な商品が並んでいた。これらの家電で調理した料理を試食することができる。
一見「Rentio」と「b8ta」は体験を提供しているという意味では競合サービスに見える。しかし、「Rentioとb8taはコンセプトは同じだが提供している価値は少し異なり、相乗効果を生み出せる」と、レンティオ代表取締役社長の三輪謙二郎氏は説明していた。
「b8taは製品そのものを知らない非認知層や、製品は知っているが興味・関心はない認知・無関心層に体験を提供し興味の底上げを行う。これに対し、製品を知っていて興味・関心を持っている人に、十分に理解して製品を購入するようにするのがRentioの役目だ」(三輪氏)
北川氏も「レンティオとは競合だが協力関係にもなれる。b8taにとってRentioはキラーコンテンツになる。将来的には展示している商品すべてレンタルできるようにすることも視野に入れている」と語っていた。
6億円調達するb8ta、次は何を目指すのか
コロナ禍の影響で米国では「b8ta」全23店舗が閉店した。なぜ、日本におけるb8taは成長を続けているのか。
それは「ビジネスモデルの違いが主な原因だ」(北川氏)という。日本のビジネスモデルは固定賃料だが、アメリカでは店舗やECでの売上や来店客数に比例するビジネスモデルをとっている。
つまり米国では、コロナ禍で平均して50%~70%来店客数が減って売り上げが下がっているのにもかかわらず、賃料は100%請求される機会が増えてしまったことが全店舗を閉店した主な理由だ。
米b8taは2021年1月時点ですでに株式をVCへ移譲しており、同12月には日本事業のライセンスを売却している。北川氏は「日本での事業展開は今後すべて当社が決める」と説明。 そしてb8ta Japanは2022年4月22日、6月末までに第三者割当増資で約6億円調達することを発表。シリーズBラウンド ファーストクローズとして、東芝テックをリードインベスターとして資金を集める。
今回の資金調達は日本国内事業の拡大を見据えたもの。同社は調達資金を、日本国内でのb8ta常設店舗や、ポップアップストア数の拡大、新事業の開発、日本以外のアジア諸国への進出、採用強化などに充てる。
アジア諸国への進出では、まず台湾、韓国、タイの3カ国を皮切りに展開を進める方針。「台湾は日本のカルチャーが好きで、韓国のデベロッパーからの問い合わせも多い。タイは今後、同市場が拡大していくだろうと見込んでいる」と北川氏は展望を示した。同社は、2025年までに8~10の常設店舗の設置を目指すとのことだ。
大人にもワクワクする体験を提供してくれる「b8ta Koshigaya Laketown」。GW中に足を運んでみてはいかがだろうか。