ドイツ発のオフィス家具メッセ「オルガテック東京2022」が4月26日から28日にかけて、東京ビックサイト(南1・2ホール)で開催されている。同イベントには国内と欧州のブランド80社以上が参加し、最先端のオフィスデザインをはじめ、オフィスワークとテレワークを両立するハイブリッドワークを支援するさまざまなツール・サービスが紹介されている。
オフィス家具を取り扱うイトーキは会場中央にブースを構え、最先端のオフィス家具やITを活用した「スマートオフィスツール」などを紹介している。その中でも、テレワーカーとオフィスワーカーとのコミュニケーションを促進するサービス、IoTセンサーを活用した位置情報提供サービス、個人や組織のパフォーマンス向上を支援するアンケートサービスの3つが目を引いていた。
ハイブリッドワークでのコミュニケーションを促進
特に注目を集めていたのが「Office Surf(オフィスサーフ)」。これは2022年7月に発売予定のサービスで、リモートワーカーとオフィスワーカーをスタンド型のデバイス「チャットスタンド」でつなげ、シームレスなコミュニケーションを生み出すものだ。
コロナ禍が社会のリモートワーク推進を後押ししている中、多くのワーカーが同僚とのコミュニケーションの減少に課題と、組織の醸成のためにコミュニケーションの必要性を感じ始めている。
サイボウズが3,000人を対象に実施した調査結果によると、テレワーカーで「コミュニケーションがしにくい」人は5割を超え、年代が下がるほど増え、20代では6割を超えている。その理由として「相手の顔が見えない、状況が分からない」「業務に関わらないコミュニケーションは取りにくい・不要・機会がない」「雑談での連絡はしない」といったことが挙げられている。
「Office Surf」では、バーチャルオフィス上にリアルオフィスと常時接続されるスポットを設置する。簡単に言えば、テレワーカーがPCやスマホの画面から、常にオフィスの状況を確認できるということだ。「雑談を促進するもの」と製品担当者は説明する。
同デバイスはモニター、広角カメラ、マイク・スピーカーが一体化しており、オフィスワーカーはスタンドチャットに集う、リモートワーカーはバーチャルオフィス上のルームに入るだけで、会話を始めることができる。同時接続が可能で、テレワーカー、オフィスワーカー含め複数人で会話することが可能。
バーチャルオフィスツールは、NTTコミュニケーションズが提供している「NeWork (ニュワーク)」を活用。20人までのチームなら無料で利用でき、21~50名なら月額27,500円、51~100名なら月額5万5,000円かかる。
4色展開するチャットスタンドの提供価格は65万円で、環境を整えるフレームパネルやフロアシートなどもオプションとして提供される予定。
働き方の見える化
「Workers Trail(ワーカーズトレイル)」は、IoTセンサー「EXBeacon」によって従業員の位置データを取得し、そのデータを活用して「従業員の働き方」を可視化する位置情報提供サービス。
誰が、どこにいるのかが一目でわかるマップ機能や、コロナ禍でニーズが高いオフィスの座席を予約ができるホテリング、オフィス内での活動の見える化ができるアクティビティ分析機能を提供する。
マップ機能では、誰がどこにいるかをマップにリアルタイムで表示する。アイコンをタップすれば名前や属性が確認でき、検索をかけたり、登録した社員だけ表示したりすることも可能だ。
また、スマートフォンやPCを使って座席を予約できるホテリングもある。日時を指定し、空き座席から好きな座席を選ぶ。オフィスに出向いたら予約した席にチェックインできる。位置情報と連動しているため、チェックインとチェックアウトは自動で完了するとのことだ。
そして、展示ブースで担当者が特にプッシュしていた機能がアクティビティ分析機能。ワーカーの滞在場所と滞在時間に活動の種類を加えることで、一定期間における場所ごとの活用時間割合や個人の一日の活動内容など、働き方を見える化する機能だ。
製品担当者は「他社製品との差別化のポイントは、このアクティビティ分析機能。見えてきた分析結果を活用して当社がコンサルとして介入し、企業のオフィス設計・効率的な運用を支援していく」と説明した。
そのほか、オフィス診断、室内環境管理、トイレ満空表示、備品管理、グループウエア連携など、さまざまな機能が同サービスに備わっている。初期費用は約400万円で、月額費用は100人規模を想定すると約10万円かかる。
企業の総合的なスコアを算出
「Workers Trail」が定量的な数値を提供するサービスであったのに対し、「Performance Trail(パフォーマンストレイル)」は定性的なデータを提供する。同サービスは、個人や組織のパフォーマンス向上に向けた課題発見のためのアンケートサービス。同社独自のロジックで個人と組織のパフォーマンスを可視化し、現場主導で活用できる改善策まで提供する。
イトーキの働き方についての知見、ノウハウを生かした既存サーベイに、テレワークや会社制度、文化といった社会背景に合わせて設問を用意。独自のパフォーマンスモデルでスコアを算出する。
具体的には、組織のコンディション(ソーシャルキャピタル)や心のコンディション(ワークエンゲージメント、ストレス)だけでなく、身体のコンディションまで幅広く把握できる設問を用意。
全社スコアに加え、性別・年齢といった基本属性や企業ごとに独自に設定する追加属性に応じたスコアリングができるだけでなく、任意に選択した企業規模別の全国スコアとも比較することが可能。なお、同サービスの提供価格はアンケート実施人数によって異なる。
イトーキは、これら3つの「スマートオフィスツール」事業を年内までに数億円規模の売上を目指すとのことだ。