日本電信電話(NTT)とスカパーJSATは4月26日、宇宙統合コンピューティング・ネットワーク事業を担う合弁会社の設立について、合意・契約を締結したことを発表した。新会社の社名は「Space Compass」で、2022年7月に設立する予定。

資本金は180億円で両社50%ずつ出資する。宇宙データセンタ、宇宙RANなどに関する事業企画・事業開発・サービス提供などの事業を展開し、民間主導での成長が見込める宇宙空間において、新たなインフラ構築に挑戦する考えだ。

今回設立する合弁会社は、2021年の両社の業務提携で発表した、「宇宙統合コンピューティング・ネットワーク」の第一歩となる。宇宙空間に構築する光無線通信ネットワークおよび成層圏で構築するモバイルネットワークを手始めに、新たなインフラの構築を目指す。

具体的には、まず宇宙における大容量通信・コンピューティング基盤の実現に向けた宇宙データセンタ事業を手掛ける。観測衛星などにより宇宙で収集される膨大な各種データを静止軌道衛星(GEO:Geostationary Orbit Satellite)経由で地上へ高速伝送する光データリレーサービスを、2024年度に開始する。

観測衛星から地上局に直接データ伝送をする既存サービスでは、地上局と通信できるタイミングや電波による通信容量に制約があるのに対し、静止軌道衛星経由での光データ伝送を用いることで、大容量・準リアルタイムのデータ伝送が可能になるという。

  • 光データリレーサービスの概要

    光データリレーサービスの概要

また、宇宙RAN(Radio Access Network)事業も行う。高高度プラットフォーム(HAPS:High Altitude Platform Station)を用いた低遅延の通信サービスを2025年度に国内で開始を目指す。

HAPSによりカバレッジを拡張できることから、災害時の高信頼通信や、船舶や航空機などへの大容量通信の提供、離島やへき地への通信サービス提供などが可能となる。携帯通信事業者にとっては、地上基地局整備によるカバレッジ拡張と並行して、HAPSを組み合わせることでモバイルネットワーク全体としてのコスト・エネルギー効率を改善できるとのことだ。

  • HAPS通信サービスの概要

    HAPS通信サービスの概要

両社は今後、2つの事業・サービスを順次強化していく。宇宙データセンタ事業では、高度なコンピューティング機能を搭載した衛星を順次拡充し、宇宙での大容量通信・コンピューティング処理基盤を提供する。2025年度の大阪万博ではNTTの大容量光通信技術の宇宙での実証を披露し、将来的には同サービスを全世界に展開する狙いがある。

宇宙RAN事業ではHAPSを活用した撮像センシングなどについても提供を検討していく予定。さらに、静止軌道衛星および低軌道衛星(LEO:low earth orbit satellite)も追加・統合し、カバレッジを拡充していくとともに、無線通信広帯域化技術の開発によりHAPS一機当たりの通信キャパシティ拡大を図っていく考えだ。

  • 宇宙統合コンピューティング・ネットワーク構想

    宇宙統合コンピューティング・ネットワーク構想