NTTは4月22日、ウルトラワイドギャップ半導体である窒化アルミニウム(AlN)を用いたトランジスタ動作に成功したと発表した。

同成果は、NTT物性科学基礎研究所の廣木正伸氏、同・谷保芳孝氏、同・熊倉一英氏らの研究チームによるもの。詳細は、IEEEが刊行するエレクトロニクスと電子デバイスに関連するすべての分野を扱う学術誌「IEEE Electron Device Letters」に掲載された。

シリコンを超す性能を有するワイドバンドギャップ半導体を活用することで、パワーデバイスの低損失化、高耐圧化が進み、省エネルギー化が実現できるため、次世代(第3世代)パワー半導体としてSiCやGaNの活用が期待されるようになっている。

またSiCやGaNを超すウルトラワイドバンドギャップ半導体を用いることで、パワー半導体のさらなる性能向上が期待されており、その候補としてAlNのほか、ダイヤモンドや酸化ガリウム(Ga2O3)などの研究開発が進められている。この3種類のウルトラワイドバンドギャップ半導体候補材料の中でもAlNは6.0eVと、ダイヤモンドの5.5eV、Ga2O3の4.5eVと比べても広く、絶縁破壊電界も12MV/cmと、ダイヤモンドの10MV/cm、Ga2O3の8MV/cmと比べても大きいため、AlNを用いたパワー半導体が実用化できれば、電力損失をシリコンの5%以下、SiCの35%以下、GaNの50%以下にまで低減できることが理論的に予想されている。

AlNは1世紀以上前に合成され、長らく絶縁体として利用されてきた材料で、これを2002年、NTTが半導体化に成功。ウルトラワイドバンドギャップ半導体の中でも、産業応用に適した大面積ウェハ上での作製が可能であるほか、GaNとのヘテロ接合形成による多様なデバイス構造を作製できるなどの利点を有しているが、これまでAlNパワー半導体に関する研究報告は少なく、あったとしてもその特性は優れたものではなかったという。