島津製作所と東京工業大学(東工大)は4月25日、実用可能な発光酵素として世界最小クラスとなる「picALuc(ピカルック)」の開発に成功したことを発表した。
同成果は、同社基盤技術研究所ならびに東工大 生命理工学院生命理工学系の古田忠臣 助教、同大 科学技術創成研究院化学生命科学研究所の上田宏 教授らによるもの。詳細は3月16日に生物-化学の境界学問分野の学術誌「ACS Chemical Biology」にオンライン掲載されたほか、5月11日~13日にかけて開催される日本顕微鏡学会第78回学術講演会ならびに、6月7日~9日開催予定の日本蛋白質科学会第22回年会、9月28日~30日開催予定の第60回生物物理学会年会にて開発に従事した同社研究者による発表も予定しているという。
近年、発光生物の遺伝子を基に人工的に作られた発光酵素がレポータータンパク質として、創薬スクリーニングや検査・診断などの分野で活用されるようになっている。
こうしたレポータータンパク質としての発光酵素には、明るさや熱安定性に加え、大きさも、大きいと「標的の挙動を阻害する」、「標的と発光酵素との融合タンパク質を作製する際、正しい構造が生成しにくい」といった問題を起こす可能性があり、より小さなものの活用が進められるようになってきており、現在は19kDaの深海エビ由来の「NanoLuc」がATP不要で、明るいことから注目を集めているという。
研究チームは、今回、カイアシ類に由来発光酵素「ALuc」(21kDa)の発光活性を維持したまま、発光活性にほぼ影響を与えないタンパク質構造を削ることで分子量を13kDaまでALucを削った発光酵素「picALuc」を開発。実際に哺乳類由来培養細胞Cos-7細胞を利用して作製したところ、既存の発光酵素の中でも高い発光活性を持つALucやトゲオキヒオドシエビ由来NanoLucと同等の発光値を示すことを確認したとするほか、大腸菌を利用した大量製造に成功したとする。
また、熱安定性についても、汎用的なレポータータンパク質として利用されているFLucは60℃で5分間加熱するとまったく光らなくなるのに対し、picALucは80℃で10分間の加熱後でも80%以上の発光値を示し、37℃で24時間の加熱後もほぼ100%の発光値を維持することも確認。特に、分子間相互作用検出のための汎用法であるBioluminescence Resonance Energy Transfer(BRET)based assayにpicALucを用いたところ、NanoLuc(19kDa)よりも高い応答が観察されたとしている。
なお、島津製作所では、今回の研究成果について、オープンイノベーションでユーザーの声を受け付ける段階と説明しており、まずはpicALucの改良および用途開発に協力してくれる国内の研究機関や企業に向けて無償のサンプル(試供品)提供を行っていくとしており、具体的な製品としての販売形式などについては、まだ検討の段階としている。