欧州連合(EU)理事会と欧州議会は4月23日、「デジタルサービス法案」(Digital Services Act:DSA)に暫定合意したことを発表した。3月には「デジタル市場法案」(Digital Markets Act:DMA)に合意しており、巨大ITや巨大プラットフォームの影響力に歯止めをかけ、消費者を保護し、デジタル経済における革新を促すための"2本柱"とEUが位置付けるデジタル規制が両方とも暫定合意に達した。EU理事会と欧州議会での採択を経て、正式に成立する見込みだ。

DSAは「オフラインで違法なものはオンラインでも違法でなければならない」という原則に従って、欧州の価値観に基づいた人権、平等、自由、民主主義と法の支配をオンラインにもたらす新しい枠組みだ。オンラインプラットフォーム、クラウドサービス、ウェブホスティングサービス、インターネットサービスプロバイダーなどを対象に、その役割、規模、オンラインエコシステムへの影響に応じた義務を課す。

規模という点では、EU域内の消費者4億5,000万人の10%以上を占める検索エンジンをVLOSEs(very large online search engines)、オンラインプラットフォームをVLOPs(very large online platforms)とし、それら影響力の強い企業を特に厳しい規制の対象にしている。例えば、表現の自由や民主的プロセスへの影響などVLOSEやVLOPが生み出すリスクの評価と緩和措置、独立監査の実施を義務づけている。他にも、違法なコンテンツ/商品/サービスへの対応、未成年を保護する仕組み、利用履歴などからお勧め情報を表示する仕組みの透明性の確保などを含み、詐欺的またはミスリードさせる手法で利用者に不利な購入や申し込みなどを行わせる「ダークパターン」も禁じている。一方で、EU域内の月間アクティブユーザー数が4,500万人以下のビジネスについては特定の新たな義務から免除し、新興企業や中小企業の発展を保護している。

3月に暫定合意に達したDMAは、従来の独占禁止法では対処しきれないデジタルプラットフォーム事業者の寡占に規制をかけるための新たな法制度の枠組みだ。自社サービスの優遇や利用を強制するような行為を禁じ、収集した個人データのサードパーティとの共有を制限、買収・合併のEUへの通知を義務づけている。

DSAは消費者のプライバシーや権利を保護する観点から、DMAは寡占を防止して競争を促す市場メカニズムの観点から、2つの異なる方向からの規制でEUはオンラインにおける消費者の基本的権利を確立し、デジタル経済を活性化しようとしている。重大な違反に対して、DSAでは年間売上高の最大6%、DMAでは同10%の罰金を科す制裁も盛り込んでいる。