朝食を抜くと体重が増えるのに筋肉量は減ることを、名古屋大学の研究グループがマウスを使った実験で明らかにした。習慣的に食べない「朝食欠食」により肝臓の代謝などに関わる「体内時計」に異常が生じるためだという。研究グループは朝食を抜く習慣はメタボリックシンドロームなどの危険性を増大させると指摘している。

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    朝食欠食によりメタボリックシンドロームなどの危険性が増大する仕組みの概念図(名古屋大学大学院生命農学研究科の研究グループ提供)

規則正しい食生活が健康維持のために大切とされているが、厚生労働省の調査などによると、朝の慌ただしさなどから若い人を中心に朝食を抜くなど、不規則な食生活を続けている人が増えている。これは日本だけなく、欧米でも同じような傾向があるという。ダイエットのために朝食を食べない人も少なくなく、文部科学省などは朝食をしっかり食べることを勧めている。しかし、朝食を食べることが健康につながるというメカニズムは詳しく解明されていなかった。

名古屋大学大学院生命農学研究科の小田裕昭准教授らの研究グループは、ラットに高脂肪食(餌)を与える実験を実施し、朝食欠食が肝臓の代謝や体温、それぞれのリズムを刻む「肝臓時計」「体温時計」という体内時計に異常をもたらして体重が増えるメカニズムを既に解明している。そして朝食を規則的に食べることは、体内時計を正常化させて太りにくい体質を作り、生活習慣病の予防に重要であることを遺伝子レベルで明らかにしている。

研究グループは今回、マウスに高脂肪の餌でなく通常の餌を与える実験で朝食欠食が筋肉に与える影響などを調べた。実験では36匹のマウスを、活動期に入ると餌を与える群と、4時間遅らせて餌を与える群に分けた。4時間の差は午前8時に朝食を食べることと正午に最初の食事を食べることの違いに該当するという。

研究グループは2週間このような餌やりを続けた。すると、朝食欠食マウスは脂肪組織の重量が増加し、体重も対照群より6%増えた。一方筋肉量は6%減少していた。

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    朝食欠食マウスと朝食を食べる対照群マウスとの体重増加量の差を示したグラフ。実験開始時は差はゼロだが14日後は約1.6グラムの差が生じた

また、マウスを解剖して肝臓や脂肪組織、筋肉の体内時計を生み出す遺伝子(時計遺伝子)のリズムを調べたところ、朝食欠食マウスでは各臓器の時計遺伝子のリズムがずれていることが分かった。

これらの結果から、朝食欠食が各臓器の体内時計の異常をもたらして体重を増加させるだけでなく、筋肉量の減少をもたらすことが初めて明らかになったという。

実験結果から研究グループは、人間でも習慣的に朝食を食べないと、体重を増加させて糖尿病などの生活習慣病につながるメタボリックシンドロームだけでなく、筋肉を萎縮させて運動器の障害が起きるロコモティブシンドロームや、加齢に伴い通常以上に筋肉の萎縮が起きるサルコペニア(加齢性筋肉減弱症)の危険性を増大させる、としている。

小田准教授は「食事では何を食べるかに注意が向くが、同じものを食べても食べるタイミングや時間により大きな影響が出ることが(研究結果から)分かる。食事のタイミングを研究するのが時間栄養学で、この分野の研究により新たな食材のために支出しなくても食べる時間を変えれば健康になれる可能性がある」とコメントしている。

研究成果は3月11日付英科学誌の「British Journal of Nutrition」電子版に掲載された。

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