三井不動産は4月21日、2012年に開始した同社のロジスティクス事業が10年の節目を迎えたとして、これまでの10年を振り返るとともに今後の10年に向けた施策を発表する記者説明会を開催した。

  • 三井不動産 専務執行役員 ロジスティクス本部長 三木孝行氏

2012年の事業開始から10年を迎え、同社の国内外の開発・運営施設は2022年3月末時点で計37物件に達し、総延床面積は約310万平方メートルとなった。今回新たに国内外6物件の開発を発表したことで、開発中も含めると同社が保有する施設は計53物件となる。総延床面積は420万平方メートル、累計投資総額は約7000憶円にも及ぶ見込みだ。

新規の開発を発表したのは「MFLP三郷(埼玉県三郷市)」「(仮称)大阪プロジェクト」「MFLP名古屋岩倉(愛知県岩倉市)」「MFLP一宮(愛知県一宮市)」「MFLP仙台名取I(宮城県名取市)」「Bangna2 Logistics park 2期(タイ チェチェン県バンパコン)」の6施設。

また、堅調にロジスティクス事業を拡大する同社は、ロジスティクス本部の中にロジスティクス運営部を新設する。新たな物件が増加する中で、サステナビリティの推進と入居テナントのさらなる満足度向上を目指すとのことだ。

  • 三井不動産は新たに6物件の開発を発表した

今後の10年間を見据えた同社の重点施策は計7点あり、1点目は「サステナビリティ」だ。同社は2021年に発表したグループ行動計画の中で、グループ全体の温室効果排出量目標を2030年度までに2019年度比で40%削減し、2050年度までに実質ゼロを目指すと定めている。ロジスティクス事業においては、物件の屋上に太陽光発全設備を配置し、蓄電池を利用した自然エネルギーの活用を検討するという。

また、「MFLP市川塩浜II」では生態系保全への施策として、グリーンインフラを整備する。同施設周辺に再生緑地を設置したほか、雨水を利用したバードパス(鳥の水飲み場)など、地域に生息する動植物の生活環境の提供にも貢献する。

  • サステナビリティを考慮した「MFLP市川塩浜II」のイメージ

2点目は「最新の物流DX(デジタルトランスフォーメーション)技術の提供」である。車両管理システムや平置きスペースの利用状況可視化システムなど倉庫内の業務効率化ソリューションに加えて、Webサイトから施設内の設備や宅配弁当の予約ができるシステムを提供し、庫内の作業効率向上だけでなく施設入居テナントの従業員満足度向上にも貢献する。

さらに、多様化するテナントニーズに応えるため、「データセンター事業の強化」「アーバン型倉庫の展開」「冷凍・冷蔵倉庫の展開」にも取り組む。5G(第5世代移動通信システム)やIoT(Internet of Things)の活用場面の増加に伴って需要が高まると想定されるデータセンターや、食品類のEコマース増加に対応するための取り組みだ。冷凍・冷蔵倉庫は今年度中に1物件着手する見込み。

  • 今年度中に冷凍・冷蔵倉庫の開発に着手する

6点目は「感染症対策の強化」。同社独自の感染対策基準として3つの感染ルートとそれぞれに対応する3つの対策から構成される計9項目の「三井不動産9BOX感染対策基準」を策定し、これに基づく感染症対策を実施する。さらに、IoT技術を活用した「アドバンスト対策」も積極的に導入することで、さらなる感染リスクの低減を目指すとしている。7点目の施策は、上述のロジスティクス運営部の新設による運営体制の強化だ。

  • 「三井不動産9BOX感染対策基準」