NTTコミュニケーションズ(以下、NTT com)と三井不動産は4月21日、愛知県名古屋市にある久屋大通公園の北エリア・テレビ塔エリア(以下、Hisaya-odori Park)において、「人とロボットが寄り添う新しいライフスタイルの創出」を目指す、ロボットを活用した無人パトロールおよびフードデリバリーの実証実験を5月30日より開始すると発表した。
Hisaya-odori ParkはPark-PFI制度によって開発されたものであり、指定管理者である三井不動産、商業ゾーンの運営管理を行う三井不動産商業マネジメントとともに、NTT comはHisaya-odori Parkにおけるさまざまな実証実験に参画してきた。
NTTコミュニケーションズ ビジネスソリューション本部 西日本営業本部 東海支店 担当課長の柴建佑氏は、「リアルとバーチャルを組み合わせたデータ利活用モデルによる価値創造に向けて、6つのユースケースに向けて、実証実験を重ねてきた」と説明した。
実証実験は2020年9月から始まり、これまで3つのステップに分けて行われた。ステップ1では「AIを活用したリアルタイムでの異常事態検知・現地対応」を、ステップ2では「人流、気象データ、売上データとの相関分析」を、ステップ3では「“Hisaya Digital Park”の提供とデジタル空間を活用したイベント」に取り組んだ。今回は、ステップ2を進化させた実証実験とステップ4として、ロボットを活用した実証実験を実施する。
柴氏は、各実証実験から、「管理・運営の効率化」「販売促進・売上貢献」「顧客体験・満足度向上といった課題が見えてきたことから、これらの課題解決に向けた実証を今回実施すると述べた。
ステップ4に当たるロボットを活用した実証実験に関しては、NTTコミュニケーションズ ビジネスソリューション本部 スマートワールドビジネス部 スマートモビリティ推進室 担当課長の田代丈晴氏が説明を行った。
ロボットを活用した実証実験は、2022年度上期に実施されるフェーズ1と2022年度下期に予定されているフェーズ2の2回に分けて行われる。フェーズ1では、「警備ロボットの自動走行の確認」「映像解析データ取得」「運用オペレーションの確認」が行われる。
無人パトロールの実証において、ロボットが取得した映像はAI 人物検索サービス「Takumi Eyes」にリアルタイムで配信され、映像を解析した結果、不審な人物を検出した場合はアラートを発呼する。そして、アラートを確認した警備員が現地に駆け付けるという、ロボットと人間が連携する仕組みになっている。
ステップ1では、「ロボット警備による迷惑行為/危険行為の抑止効果」「ロボット搭載カメラ×AI映像解析ソリューションによる警備業務の効率化」「ドコモの5G活用による警備業務の高度化」を検証する。
フェーズ2では、デリバリーロボットが加わり、「エレベータ連携による警備エリア拡張」「デリバリーロボットの自動走行」「フード注文~決済~提供までの実現性」「複数ロボットによる自動走行」が行われる。
ユーザーはモバイルオーダーサイトで注文を行い、Hisaya-odori Parkのメディアヒロバで、開錠コードでロボットを開錠して頼んだフードを受け取る。ステップ2では、「ロボットを活用したフードデリバリーサービスの意見収集と分析」「フードデリバリーでのロボット活用による課題の明確化」「フードデリバリー利用店舗の運用課題の明確化」を検証する。
ステップ2の進化版の実証実験である「人流データを活用した販促の高度化」については、NTTコミュニケーションズ ビジネスソリューション本部 スマートワールドビジネス部 スマートCX推進室の中村俊允氏が説明した。
今回、Hisaya-odori Parkの実店舗から取得する人流データとレジ客動向の分析に加えて、ドコモが保有するdポイントクラブ会員8,700万人以上の会員基盤と顧客理解技術を用いたデジタルマーケティングを取り入れた来店促進や顧客満足度を高める施策を実施する。
これまではHisaya Odori Park全体の人流のみで分析を行っていたが、店舗へにAIカメラを導入して細かな人流を取得し、真の顧客割合を抽出・分析する。加えて、検証で用いる人流データ、ドコモの会員基盤データ、MSP会員基盤データは特性が異なるから、中村氏は「特性が異なるデータを組わせることで新たな価値が生まれ、これまでとれなかったユーザー層のデータがとれるのではないか」と語った。
今後は、デジタルツインの有用性を検証しながら、ユースケースの拡大とICTの活用により実証から社会実装を目指すとともに、Hisaya odori Park の知見を横展開し、あらゆる領域・エリアで共創パートナーと新しい価値の創出、社会課題の解決、地域活性の拡大を見据えているという。