厚生労働省は19日、米バイオテクノロジー企業ノババックスが開発した新型コロナウイルスワクチンを承認した。国内で使える新型コロナ感染症のワクチンとしては4番目で、「組み換えタンパクワクチン」と呼ばれる型では初めて。武田薬品工業が国内で製造する。政府は武田と1億5000万回分を契約。国内で製造できるため、安定供給が見込めるとしている。
厚労省とノバ社によると、武田が昨年12月16日にノバ製ワクチンを同省に承認申請していた。組み換えタンパクワクチンはウイルス表面にあるタンパク質を合成して利用するもので、米ファイザーや米モデルナの「メッセンジャーRNAワクチン」(mRNA)型とは仕組みが異なる。18歳以上を対象に3週間間隔で1回0.5ミリリットルを2回筋肉注射する。6カ月経過すれば3回目接種にも使えるという。
米国など海外で実施された臨床試験(治験)では、1、2回目の接種後に約90%の発症予防効果を確認している。対象となった治験はオミクロン株の流行の前に行ったが、厚労省のワクチン専門部会は、慎重な審査の結果、国内の治験でも海外のデータと同様の結果が得られ、オミクロン株に対しても一定の有効性がある、などと判断。18日にノバ製ワクチンを承認することを了承していた。
審査では2回接種後に頭痛44.5%、筋肉痛48.1%、倦怠(けんたい)感38.9%などの副反応のデータも報告されたが、多くは軽症で安全性に大きな懸念はないとされた。また3回目接種の治験では、中和抗体値が上昇することも確認したという。
厚労省は今後、ワクチン分科会を開催し、具体的な接種の進め方や、mRNAワクチンを接種した人が組み換えタンパクワクチンを接種する「交互接種」を認めるか、などについて議論する。同省は早ければ5月下旬から各自治体に約10万回分のノバ製ワクチンを配送したい考えだ。後藤茂之厚労相は19日の閣議後記者会見で今後「必要な審議を経た後に速やかに、かつ円滑に接種を開始できるよう各自治体に体制整備をお願いした」などと述べた。
新型コロナウイルスワクチンとしては、mRNA型のファイザーやモデルナ製、ウイルスベクターワクチンと呼ばれる型の英アストラゼネカ製の3種類に続き、4種類目、4番目の承認になる。
組み換えタンパクワクチンは新型コロナウイルス対策として国内承認されたのは初めてだが、帯状疱疹(ほうしん)ワクチンや子宮頸(けい)がんの原因となるヒトパピローマウイルスに対するワクチンなどは既に承認されている。
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