花王安全性科学研究所・ハウスホールド研究所は、家庭で使用されるタオルを調査し、半年間の使用を通してその平織り部に菌のかたまり(バイオフィルム)が形成されることを発見したと発表した。またそのバイオフィルムを構成する菌種は、手指などに存在する菌とは異なり、植物の根付近にいるような菌を含む独特の菌叢(きんそう:菌の集団)を形成していることも確認したという。

  • タオルの構造と菌のかたまり(バイオフィルム)が見られた場所の顕微鏡画像

    タオルの構造と菌のかたまり(バイオフィルム)が見られた場所の顕微鏡画像(出典:花王)

半年間使用したタオルに生じる変化や菌の状態を調査

身のまわりの繊維製品でにおいやくすみが生じる原因の1つに、繊維で増えた菌や菌の代謝物が挙げられる。こうした繊維上の菌がもたらす課題について、従来はTシャツなどの一部の衣類を対象に研究されてきた。

花王は、繊維製品の中でも素材や折り方、編み方が異なると、住み着く菌の種類やつき方、生じる課題が変化するとの仮説に基づき、特に衛生行動に使用されるタオルに着目。平面的に織られた糸(平織り部)に対してループ状に編まれた糸(パイル部)を立体的に重ねる独特な構造によりフワフワした分厚い感触を生むタオルは、生活の中でにおいやくすみを感じることは少なくないが、そこに付着する菌についてはほとんど研究されてこなかった。そのことから今回、タオル表面に菌がどのように付着し、どのような課題を引き起こすかを調査するに至ったとのことだ。

同調査では24家庭に新品のタオルを配布し、普段通りの使用と洗濯を繰り返す中でその変化を2か月おきに調査した。その結果、タオルの色はひと目で明らかなほどくすんだ状態に変化したという。 菌は何らかの表面に付着してかたまり(バイオフィルム)となることがあり、その過程で菌は多糖やタンパク質、DNAといった物質を菌体外に出すことが知られている。同研究で回収したタオルに含まれるバイオフィルムを調査したところ、バイオフィルムの構成成分である菌そのものの数に加えて、多糖やタンパク質、DNAがいずれも時間の経過とともに増えていく様子が観測された。

  • 使用と洗濯を繰り返したタオル

    使用と洗濯を繰り返したタオル(出典:花王)

平織り部まで菌が入り込みバイオフィルムを形成

こうしたタオルに菌がどのように付着しバイオフィルムを形成したのか、回収したタオルの糸を構成する繊維を顕微鏡で詳細に観察したところ、菌がすぐに到達すると考えられるタオル表面のパイル部には菌が見られず、パイルの奥をかき分けて平織り部をほぐしていくと、繊維の間にたくさんの菌がぎっしりと詰まっている様子が捉えられた。またその菌の数は、2カ月から6カ月とタオルを長く使うほど、増えていくことが観察されたという。

  • 繊維の隙間に経時的に菌が蓄積する様子の顕微鏡画像

    繊維の隙間に経時的に菌が蓄積する様子の顕微鏡画像(出典:花王)

このような場所にバイオフィルムが形成された理由として、菌は、タオル表面(パイル部)の糸が大きく動き易く、洗剤にも触れやすいところにはあまり付着できず、平織り部のような糸が動きにくく水分が残りやすいところを好んだ可能性があるとのことだ。