経済産業省傘下の新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は4月19日、グリーンイノベーション事業の一環として「次世代蓄電池・次世代モーターの開発プロジェクト」を担う企業・大学を決定し、研究開発を開始すると発表した。
同プロジェクトは、次世代自動車の中核を担う電気自動車などの主要部材・機構である次世代蓄電池と次世代電気モーターを開発・事業化するプロジェクトとして2022年度から2030年度まで実施し、「予算総額は1510億円の見通し」(現時点での見通し)という。
同プロジェクトでは「次世代蓄電池と次世代電気モーターについて、構成する材料レベルから見直し、高性能化や省資源化、リサイクル化を図り、その材料などのリサイクルまで見込んだサプライチェーン・バリューチェーンを構築することを目指す」としており、18の研究開発テーマを設定し、今回はその18テーマの開発に関して公募した企業・大学の選定が完了し、研究開発プロジェクトに着手した段階だ。
採択された企業には競合も含まれている。
この背景には、日本の自動車メーカーは電気自動車や燃料電池車の実用化・市場投入は早かったものの、脱炭素目標を掲げた欧州の自動車メーカーや中国の自動車メーカーが戦略的に電気自動車の普及に力を入れ、電気自動車向けの蓄電池開発と事業化を強力に進め始めているという事情がある。
欧州・中国の勢いに負けないように、日本の電気自動車とそれに搭載する蓄電池開発を戦略的に進めるために、同プロジェクトが企画され、推進されているといえる。
研究開発項目の1つ「高性能蓄電池・材料の研究開発」では、電気自動車の航続距離を決めるエネルギー密度を現行の約2倍の700~800Wh/リットル以上の性能を持つ蓄電池の実用化を目指す。
この高容量蓄電池の候補は全固体電池になるとみられ、実現する材料開発がポイントになる模様だ。
Co(コバルト)や高機能黒鉛などは現時点では特定の国・地域からの供給に依存しているために、この問題解決策として使用量を減らす、あるいは代替材料を探す開発を始める計画だ。さらに、こうした高性能材料をつくる工程を低炭素化するプロセスを探す計画でもある。
そして、「蓄電池のリサイクル関連技術開発」では、Li(リチウム)70%、Ni(ニッケル)95%、Co(コバルト)95%以上を回収可能なリサイクル技術を開発することを目指す。
また、「モビリティ向けモーターシステムの高効率化・高出力密度化技術開発」では、モーターシステムの高効率化(システム平均効率目標は85%)や小型・軽量化、パワー向上(システムの出力密度目標は3.0kW/kg)の実用化に向けで、材料やモーター構造、インバータ、冷却技術などの革新技術を網羅的に開発する計画だ。
筆者注
グリーンイノベーション事業は、経済産業省が2兆円の基金を設け、その基金を用いてNEDOがグリーンイノベーション基金事業を推進するという体制で推進している。 そのグリーンイノベーション事業の参照Webサイトはこちら