ペーパーレス経費精算クラウドや請求書受領クラウドを提供するTOKIUM(旧BEARTAIL)は4月19日、第三者割当増資で約35億円の資金調達を実施したことを発表した。JICベンチャー・グロース・インベストメンツや、ジャフコ グループ、SMBCベンチャーキャピタルなどの政府系や独立系のファンドを引受先とした。同日、オンラインで事業戦略発表会が開かれた。

同社は約35億円の資金調達により、電子帳簿保存法(電帳法)の改正やインボイス制度への対応、法人の支出管理業務における課題を解決するサービスの開発を加速する。また、企業のSDGs(持続可能な開発目標)達成をサポートする新サービスの研究開発、それに伴う採用およびマーケティング活動にも資金を充当する考えだ。

過去3決算期売上高成長率は182.8%

同社は2022年3月31日より社名を「BEARTAIL」から「TOKIUM」へ変更した。代表取締役の黒﨑賢一氏は「無駄な時間を減らして豊かな時間を創るという思いを社名に反映した。未来へつながる『時』を『生み出す』でTOKIUMだ」と、社名変更への思いを語った。

  • TOKIUM 代表取締役 黒﨑賢一氏

TOKIUMは、2つのサービスを展開している。1つはペーパーレス経費精算クラウド「TOKIUM経費精算(旧レシートポスト)」で、紙関係の後工程をすべて代行し手間と不正リスクを最小化するサービスだ。

利用者は、領収書などをスマートフォンから写真として登録し、原本を専用のポストに入れるだけで経費精算が完了する。2000名の専属オペレーターがシステムに登録された写真を5分以内にデータ化しクラウドに反映する。専用ポストに入れられた原本を回収した後、申請に対応する原本が投函されたかを点検し、10年倉庫で保管する。

「AI-OCRなどは使わず、あえて人力でチェックしてデータ化する。精度は99.9%を誇っており、これからも人力でのサービスにこだわっていきたい」(黒﨑氏)

  • TOKIUM経費精算の概要

もう1つのサービスが請求書受領クラウド「TOKIUMインボイス(旧インボイスポスト)」だ。これは、どんな形式の請求書でも、受領から保管までオンライン化・ペーパーレス化し代行して管理するサービス。

請求書を一律で代行で受領してオペレーターによりデータ化し、クラウドに集約する。仕訳・会計ソフトと連携でき、オンライン上で承認作業が完結するため、経理担当はオフィスに届く請求書を受領するためにわざわざ出社しなくてよくなる。原本はTOKIUM経費精算と同様に10年間倉庫で保管される。

「請求書の電子化は取引先の協力が必要なため、自社の努力だけでは進みにくい。請求書受領代行サービスであれば、取引先に関係なく電子化できる」(黒﨑氏)

  • TOKIUMインボイスの概要

コロナ禍により請求書受領代行サービスの需要が高まったこともあり、同社の直近1年間での新規受注金額は前年同期比で4倍以上を達成した。2021年中頃から、電帳法改正の影響も受けさらに受注が拡大しているという。過去3決算期の売上高は成長率182.8%を達成。2022年3月時点で、両サービス累計で900社を超える企業に導入されており、これまでにデータ化した領収書・請求書の枚数はすでに1億5千万枚を超えたとのこと。

  • 直近1年間での新規受注金額は前年同期比で4倍以上を達成

  • データ化した領収書・請求書の枚数

電帳法対応・インボイス制度対応に注力

しかし、請求書支払い業務における課題は依然として多い。同社の調査によると、7割以上の企業が今後も紙の請求書を利用する意向で、受取形式は紙やPDFファイル、メール添付など最低5種類もある。紙と捺印に基づく承認プロセスも根深く、毎年変更される複数の複雑な法制度に対応しきれていない企業も多い。

そこで同社は、2023年12月までに予定されている電帳法対応・インボイス制度対応に注力する事業戦略を発表した。まずは調達した資金を、プロダクトへの投資だけでなく、マーケティングや採用に投資し、請求書受領クラウド市場におけるリーダーポジション確立を目指す。

同時に、既存サービスの複数利用に注力することで、「支出管理にまつわる作業が全てTOKIUMで完結する」状態を目指す。そして、経費精算から請求書支払いにまつわるデータをすべてTOKIUM上に蓄積することで、データ活用で「支出の最適化」を実現する考えだ。

  • 2023年12月までの主な開発マイルストーン

具体的には、取引書類を一元管理できるようにする。取引に関わる見積書や発注書、納品書などの各種書類を領収書や請求書とひも付けて横断的に管理できるようなサービスを目指す。また、受領請求書のペーパーレス化に加え、自社が発行する請求書の発送代行機能の開発も進める。

また立替経費・請求書支払いなどの支出状況を横断的にリアルタイムで可視化できる機能や、今後、企業でも開示が求められていくカーボンフットプリントの自動計算機能の構築も進める。

「経費精算や請求書支払い業務の効率化、DX(デジタルトランスフォーメーション)をサポートするサービスから、『支出データを可視化して、企業の支出に関する正しい意思決定をサポートする』サービスへ昇華させていきたい」(黒﨑氏)