サイレックス・テクノロジーは4月6日~8日まで開催されていた「Japan IT Week 春」内の「第11回 IoT&5Gソリューション展」にてWi-Fi HaLowに準拠したモジュールによる映像伝送デモや、ローカル5G通信と低遅延映像デバイスを用いたデモなど、同社が掲げる“途切れない無線空間”を実現するソリューションの展示を行った。
ローカル5G通信と低遅延映像技術を体感
同社は商用ローカル5Gの無線局免許を取得し、ローカル5G、Wi-Fi 6、IEEE 802.11ah(Wi-Fi HaLow)対応製品の開発・検証が可能な施設「THE BASE for 5G and Wireless(THE BASE)」を2022年2月1日に、同社の京都府けいはんな本社3階にオープンしている。
展示では、京都のTHE BASEにあるロボットを、東京から遠隔操作するという5G通信とサイレックスの低遅延映像技術を体験できるデモが用意されていた。
このデモを実現しているのは、同社の「ローカル5Gモジュール」と「低遅延映像デバイス」だ。
東京からコントローラで行った指示は、インターネット通信を介しTHE BASEに送られ、THE BASEに設置されたローカル5G用通信装置によってTHE BASE内の5Gアンテナに送られる。そして、アンテナから5G通信でロボットに指示が送られる。
THE BASEに設置されたカメラの映像は、映像データの送受信や加工を行うことができるモジュールが組み込まれた低遅延映像デバイスによって東京に送信され、受信機として東京に設置された低遅延映像デバイスを介しモニターに映る。
これらの5G通信を用いた低遅延映像伝送技術は、遠隔手術など、ロボットと手元の視覚情報に差があると問題がある場合への活用を想定しているという。
今後は、5G通信モジュールと低遅延映像デバイスを組み合わせ、1つでローカル5G環境で低遅延映像を実現するデバイスの開発も進めていくという。
日本国内でも実用化が近い、長距離通信が可能なIEEE 802.11ah(Wi-Fi HaLow)対応製品
IEEE 802.11ah(Wi-Fi HaLow)は、920MHz帯の周波数を利用する通信手段のひとつで、半径1kmの長距離通信が可能なうえ、映像の送信も可能な通信速度を備えており、低消費電力という特徴をもつ。
これらの特徴からIoTの通信システムとしてさまざまな分野で活用が期待されるWi-Fi規格だ。
日本では同規格の審議が進んでいるという状況だが、アメリカではすでに実用が進んでおり、サイレックスも同規格対応の無線LANモジュールの北米モデル「SX-NEWAH(US)」をすでに上市している。
展示では、同無線LANモジュールの日本モデルを参考出展するとともに映像や画像を伝送するデモを行った。
映像伝送デモでは、ブース上部に設置したカメラに取り付けたWi-Fi HaLow対応の送信機で、撮影した会場内の映像を離れた場所にあるディスプレイに送る様子を見ることができた。
ブースの担当者によれば「映像は粗いが、動画といった大きなデータを取り扱うことができるため、例えば害獣検知やダムや河川の状況把握など活用できるシーンはさまざまだと考えている」とした。
また、SX-NEWAHとカメラとセンサを組み合わせ、3分に1回写真を撮影し、3秒に1回センサデータを送信するデモも紹介されていた。Wi-Fi HaLowは、低消費電力が特徴な単三電池4本を動力に15時間の動作が可能だという。
ブースの担当者に展示の反響を伺ったところ「写真や映像を送ることができるという部分に驚かれる方が多い。日本は災害国のため、河川監視といった屋外用途や工場IoTといった屋内などのさまざまな用途での使用が考えられる」とした。