Slackは4月19日、Future Forum Pusleレポートを公表した。Future Forum Pulseは四半期ごとに調査を実施しており、米国、オーストラリア、フランス、ドイツ、日本、イギリスのナレッジワーカー1万人以上を対象としたアンケートをもとにしている。

今回の調査は第6回目で2022年1月27日~同2月21日までとなり、日本における新型コロナウイルスのオミクロン株に伴う第6波の感染者がピークに達した時期と重なっている。

調査結果をふまえ、セールスフォース・ジャパン Slack アライアンス本部 シニアディレクターの水嶋ディノ氏は「従業員体験スコアの低下、経営幹部によるダブルスタンダード、時間の柔軟性の欠如が離職につながる、というの3つのポイントが今回の調査で見えてきた」と話す。

  • セールスフォース・ジャパン Slack アライアンス本部 シニアディレクターの水嶋ディノ氏

    セールスフォース・ジャパン Slack アライアンス本部 シニアディレクターの水嶋ディノ氏

  • 調査結果で判明した3つのポイント

    調査結果で判明した3つのポイント

フルタイムオフィスワーカーの体験スコアは著しく低下

調査によると、グローバルにおけるナレッジワーカーの34%、日本は世界で最も高い51%が週5日でオフィス勤務しており、2020年6月の調査開始以来で最も高い数字となった。このような変化に伴い従業員心理は低いレベルに落ち込んでいるという。

特に、フルタイムのオフィスワーカーの体験スコアは著しく低下し、幸福度が最も低い状況となっている。また、前回比の平均でも最も急激な下落を示しており、グローバルでは「ワークライフバランス」と「仕事上のストレスや不安」で過去最低レベルに達し、日本ではストレスと不安以外すべてで過去最低を記録した。

  • フルタイムのオフィスワーカーは最も幸福度が低いという

    フルタイムのオフィスワーカーは最も幸福度が低いという

経営幹部によるダブルスタンダードに関しては「週5日オフィスで勤務したい」と回答した人の割合は経営層と非経営層で同等の21%ではあるが、週5日オフィスで働いている非経営層の割合は35%、経営層は19%と乖離が生じており、非経営層が毎日オフィスで勤務している割合は経営層の約2倍となっている。

  • 週5日オフィスで働いている非経営層と経営層の割合には乖離が生じている

    週5日オフィスで働いている非経営層と経営層の割合には乖離が生じている

こうした状況により、非経営層の体験スコアが大幅に低下し、経営層と比較してワークライフバランスは5倍、ストレスや不安は2倍、それぞれ悪化している。

ナレッジワーカーは場所の柔軟性よりも時間の柔軟性を求めている

そして、時間の柔軟性の欠如が離職につながることについては、従業員は明らかに働く場所・時間の柔軟性を求めているという結果となった。場所に関してはナレッジワーカーの79%が柔軟性を求めていると同時に、フルタイムでオフィス勤務している従業員のうち、少なくとも一定の柔軟性をが欲しいと回答した割合は55%となっている。

一方、時間については働く時間の柔軟性を求める割合は94%、あらかじめ決められた時間で勤務しなければならないナレッジワーカーの割合は65%となっている。

水嶋氏は「時間の柔軟性に対する要望は、場所の柔軟性に対する要望よりも大きく、強く求められている日本の場合は、時間の柔軟性を持っている割合は34%と低く、調査した6カ国の中で最も低い数値だ。時間の柔軟性を求めている割合は86%、場所の柔軟性は70%となり、日本においてもグローバルと同じく、場所の柔軟性よりも時間の柔軟性を求めている」と説明する。

  • 従業員は働く場所よりも時間の柔軟性を求めている

    従業員は働く場所よりも時間の柔軟性を求めている

さらに、勤務時間の柔軟性がほとんどないナレッジワーカーは、中程度の時間の柔軟性を持つナレッジワーカーと比較して、今後1年以内に転職活動を「必ず行う」と回答した割合が2.6倍となっており、仕事のストレスや不安の悪化は2.2倍、ワークライフバランスの低下は1.7倍、燃え尽き感の悪化は1.4倍となっている。

さらに、常にリモートワークしたいと考えているワーキングマザーの割合は57%(昨年11月調査は50%)、ワーキングファザー割合は48%(同43%)と柔軟性を求める声が増加しており、2020年の調査開始以来で場所の柔軟性を求めるワーキングマザーの割合が82%と過去最高に到達している。

ナレッジワーカーは場所の柔軟性よりも時間の柔軟性を求めている

このような傾向を鑑みて、人材獲得競争に勝つ方法として水嶋氏は3つの観点からを紹介している。

まずは、自律性を高めるハイブリッドワークのためのガイドラインと行動指針を開発し、従業員を管理することと選択の自由のバランスをとることだ。

次に、チーム単位でコミュニケーションに対する明確な期待値を設定して経営層だけでなく、すべての従業員の柔軟性を拡大するなど、スケジュールんお柔軟性を全面的に採用することだという。

そして、最後に新しい働き方を継続的に実践することで、小さな成功を喜び、完璧ではなく進歩を目指す学習文化の標準化が重要だと指摘していた。

  • 3つの観点の概要

    3つの観点の概要

最後に、同氏は「日本においては51%の人がオフィスで勤務しているが、満足度のスコアは2.4と低くく、ハイブリッドワークは40%で満足度は10.3、リモートワークは9%で同12.3と格段に高い。欧米では先行してオフィス回帰が進み、満足度が低下しているものの、もともと日本ではオフィス勤務している人が多いうえに、今後はさらにオフィスへの出社が多くなることが想定されている。そのため、これまでハイブリッド/リモートワークで満足度が高かった人をオフィス回帰で低い満足度にしてしまうことは、残念であるとともに危惧している。経営層の方はパンデミックを通じて、ハイブリッド/リモートワークでの知見を活用して、今後の働き方を考えてもらえればと思う」と述べていた。