産業技術総合研究所(産総研)は、企業の新素材開発とその事業化を支援する拠点となる「マテリアル・プロセスイノベーション(MPI)プラットフォーム」の開所式を産総研中部センター(名古屋市守山区)で開催した。

MPIプラットフォームは、産総研研究部門の材料・化学領域に属する中部センターのセラミックス・合金拠点、つくばセンター(茨城県つくば市)の先進触媒拠点、中国センター(広島県東広島市)の有機・バイオ材料拠点の3拠点に、最先端の製造プロセス装置や評価・分析装置群を研究センターに導入し、マテリアル開発や実装に必要なプロセスデータの取得、技術シーズ・ニーズへの対応や人材育成に関わる機能を企業などに総合的に提供するというもの。材料メーカーなどと産総研が共同研究を行い、新材料の事業化を支援していくという。

  • 産業技術総合研究所のマテリアル・プロセスイノベーション(MPI)プラットフォームの3拠点。中部センターのセラミックス・合金拠点、つくばセンター (茨城県つくば市)の先進触媒拠点 、中国センター(広島県東広島市)の有機・バイオ材料拠点で構成

    産業技術総合研究所のマテリアル・プロセスイノベーション(MPI)プラットフォームの3拠点。中部センターのセラミックス・合金拠点、つくばセンター (茨城県つくば市)の先進触媒拠点 、中国センター(広島県東広島市)の有機・バイオ材料拠点で構成(出典:産総研)

MPIプラットフォーム統括を務める濱川聡材料・化学領域長は「MPIプラットフォームの特徴は、データ駆動型材料開発基盤体制を構築する点にある」と説明した。

  • データ駆動型材料開発基盤態勢の模式図

    データ駆動型材料開発基盤態勢の模式図(出典:産総研)

各拠点では、それぞれに得意な材料開発分野を持つため、企業が開発したい分野に応じて各拠点が支援するという。例えば、「つくばの触媒化学融合研究センターは革新的な触媒を研究開発するための設備を有し、自動化された触媒の研究開発装置を用いて、各種のデータを測定しながら、触媒を開発する仕組みを持っている」と、先進触媒拠点の佐藤一彦センター長は説明する。

そして「機械学習を利用した触媒設計システムや、ハイスループットな触媒自動合成設備、自動評価設備などを導入し、触媒開発の経験があまりない企業でも、機械学習を利用することで求める触媒開発を一体的に行うことが可能な拠点に整備している」と解説した。 触媒化学融合研究センターでは、「デジタル駆動化学チーム」を持ち、化学にAIなどのデータ科学に計算化学、自動化技術、ロボティクスなどを融合させる“デジタル駆動化学”研究を推進しており、こうした研究体制を企業との共同研究に適用するという。

また、中部センターのセラミックス・合金拠点では、多彩なセラミックスや合金を開発する設備群を備えている。「セラミックスや合金の原料となるナノ粒子から部素材に至るまでのプロセス全体を一括で研究開発する能力を備えた拠点だ」と、中部センターの松原一郎所長は解説する。

そして、「マテリアル・プロセスイノベーションの考え方を、材料事業の製造プロセスに適用する取り組みを進めてプロセス・インフォマティクス(PI)を実現する体制を築く」という。

なお、今回開設した産総研のMPIプラットフォームに参加するためには、各企業はまず、技術コンサルティング契約を産総研と結び、さらに事業化を進める際には共同研究契約を締結することが不可欠となる。