電気通信大学(電通大)は4月14日、5指独立駆動型サイボーグ義手の開発と実用化に成功し、病院などでのフィールドテストをパスし、厚生労働省(厚労省)の補装具等完成用部品として認められ、電通大発ベンチャーのMu-BORG(ミューボーグ)での取り扱いを開始したことを発表した。
同成果は、電通大大学院 情報理工学研究科の山野井佑介特任助教、同・矢吹佳子特任研究員、同・黒田勇幹 大学院生らと、北京理工大学との国際共同研究チームによるもの。詳細は、2月7日から9日まで大阪で開催された国際会議「2022 IEEE 4th Global Conference on Life Sciences and Technologies(LifeTech)」にて発表された。
これまでに国内で公費支給されてきた筋電義手は、主に海外製品であり、そのために高価であるとともに、機能的な制限も大きく、自由に機能追加などの開発を行うことが困難だったという。
今回開発された成人用の5指独立駆動型サイボーグ義手システムは、3chの筋電センサの情報をルネサスのSH2マイコンを介して、生体信号の筋電により5指ロボットハンドを制御するというもので、可搬重量は5kgとなっている。
パターン識別機能を用いることで、筋電信号の周波数強度パターンと義手の手指動作パターンの対応関係を後天的に対応させる手法である適応学習機能を搭載しており、最大8つの動作を識別できる。これにより、より自由かつ直感的に義手を動かせるようになるという。また、独自開発のメカおよび制御系システムを採用しているため、自由に機能を追加することも可能だともしている。
今回のシステムは、3名の被験者と3か所の病院および義肢装具会社の協力を得て、3か月間のフィールドテストを実施。そして主治医の診察として、日常生活において有効に機能し、被験者の生活向上に寄与するとの評価結果が得られたとしたほか、これらの評価結果に加え、組み立てマニュアルとプロトタイプを厚労省に提出し、完成用部品としての認定登録に至ったという。
これまでも筋電義手は国内の大学や研究機関などにより、プロトタイプが披露されてきたものの、完成用部品として登録されているものは、山野井特任助教らの研究チームが2018年に開発したもののみであり、それ以外の品種はいずれも海外の大手3社製のものであり、今回の5指独立駆動型サイボーグ義手システムは、国産としては2例目となるという。
なお、今回の5指独立駆動型サイボーグ義手システムは「BITハンド」の名称で、Mu-BORGが2022年4月1日から取り扱いを開始している。