セールスフォース・ジャパンは4月13日・14日、バーチャルカンファレンス「Salesforce LIVE: Japan Service Change Makers 一度の機会から生涯のお付き合いへつなぐ至高のサービス体験」を開催している。
13日の特別講演「心温まるサービス体験の未来型」においては、大阪大学基礎工学研究科教授の石黒浩氏と世代・トレンド評論家で立教大学大学院客員教授の牛窪恵氏がゲストとして参加、セールスフォース・ジャパン専務執行役員の宮田要氏とともにAIやロボット、アバターと共生していく新たな日本の働き方を語った。本稿では、この特別公演の模様をお届けしよう。
アバターと共生する社会が働き方をより自由にする
初めに石黒氏は、コミュニケーションがより大切になってくる今後の社会においては、「アバター共生社会」が働き方をより自由にすると語った。
アバター共生社会とは、生身の人間が仕事などの際にコミュニケーションを取るのではなく、アバターを介したコミュニケーションを指し、石黒氏自身そのコミュニケーションツールの開発に関わっている。 アバターを介したコミュニケーションを取ることのメリットとして、恥ずかしい話や打ち明けにくい話が気軽にできるようになるほか、質問がしやすくなるということが挙げられる。
石黒氏は、「そもそも人間は多重人格的」と述べ、学校での自分、アルバイト先での自分、家での自分などさまざまな面を持っているのが人間だと説明した。そのため、さまざまな人格を変えられるアバターであれば、いろいろな自分としてさまざま関わり合いができるという。
コロナ禍で変化した「コミュニケーション」の在り方
次に牛窪氏は、2011年3月に起こった東日本大震災を例に挙げ、大きな災害に瀕するとコミュニケーションの在り方が変わり、コミュニケーションツールの技術が進歩すると語った。
東日本大震災やコロナ禍は、人間は1人では生きていけないということを再確認するきっかけになったという。
実際、東日本大震災を契機に既読機能を有したコミュニケーションツールであるLINEが生まれ、また、コロナ禍では家にいても他者とつながることのできるオンライン商談やオンライン会議、オンライン飲み会が注目を集め、われわれの生活に定着しつつある。
本来、テレワークの推進は、今後、世界中で広がるといわれている超高齢化社会を前に、雇用や介護の問題を解決する策として、コロナ禍よりも以前から取り組むべき課題とされていた。しかし、このコロナ禍により、企業では在宅ワークを余儀なくされ、副産物的にテレワークが推進される結果となったのだという。
このように大きな災害に遭った際、「『人とつながる』ことがより大切に感じられ、コミュニケーションの在り方が変わる」と牛窪氏は強調した。
本屋で本を手に取るような偶然の出会いをAmazonでも
また牛窪氏は、今後のサービス体験における課題として、AIによるリコメンド機能が起こす「フィルターバブル」の危険性を示した。
フィルターバブルとは、ECサイトやWebメディアなどのリコメンド機能(前に興味を示したものと似たようなものをおすすめされる機能)によって、自分の興味のあることに関しては詳しくなるが、興味のないことを知り得る機会が減ってしまうことを指す。
「Amazonでも本は買えるが、本当に胸が躍るのは本屋で本を見つけた時」と、 宮田氏が同調するように、今後のサービス業界には「偶然の出会い(セレンディピティ)」が求められる。
牛窪氏は、「サービス業界は自分が興味のあるものをリコメンドするのではなく、自分に関して新しい発見があるようなおすすめをできるように変わっていかなくてはいけない」と強く語っていた。