東京工業大学(東工大)は4月11日、資生堂との共同研究により、不可能とされてきた「I型コラーゲンの可視化」に成功し、高解像度ライブイメージング解析などによってコラーゲン生合成過程を分子細胞レベルで解析することを可能にしたと発表した。

同成果は、東工大 生命理工学院 生命理工学系の田中利明助教らの研究チームによるもの。詳細は、ライフサイエンス全般を扱うオープンアクセスジャーナル「Life Science Alliance」に掲載された。

細胞外マトリックスの主要成分としてヒトの身体を構成するコラーゲンは、全タンパク質のおよそ30%を占め、生命活動において重要な役割を担っていることが知られている一方、臓器でのコラーゲンの過剰や変質などの異常は、疾患につながってしまうことも知られている。しかし、そのようなコラーゲン異常が原因の疾患については、未解明な部分が残されており、治療法が確立されておらず、新たなコンセプトに基づく根治法の開発が求められていた。

現在、コラーゲンには28種類の型があることが知られており、そのうち90%以上が占めるのがI型コラーゲンで、コラーゲン異常が原因の難治性疾患では、このI型の過剰発現およびその変異が多く認められているという。しかし、I型コラーゲンタンパク質は、わずかな変異によって不安定化して線維が形成されなくなってしまうことから、研究手法として一般的な変異導入やタグ分子の付加などが困難であり、プロセッシング、輸送、分泌や線維形成といったコラーゲン生合成過程に関する、分子細胞レベルでの基本情報そのものが不足していたという。

こうした背景のため、コラーゲン異常が原因の難治性疾患の治療法および診断法の開発が難しいとされていたが、研究チームは今回、不可能とされてきたI型コラーゲンの可視化を試みることに挑み、細胞内のコラーゲン前駆体(プロコラーゲン)の発現からその修飾の様子(プロセッシング、部分切断)、細胞内輸送、分泌といった一連の過程を分子細胞レベルで解析可能にすることに成功したとする。

  • 開発された可視化I型プロコラーゲンの模式図

    開発された可視化I型プロコラーゲンの模式図 (出所:東工大プレスリリースPDF)