三菱電機は4月12日、観光客の購入品を無人搬送ロボットが搬送する実証実験を実施すると発表した。2022年4月19日~4月22日の期間、三重県にある大型商業リゾート施設「VISON(ヴィソン)」で実施し、無人搬送ロボットが観光客の購入品を各店舗から収集し、店舗のタブレットを活用して観光客が指定した時刻・場所へ自動で届ける。
「手荷物が増えて持ち歩きが大変だから買い物を控えよう」と考える観光客は少なくないだろう。同社は手ぶらでの観光を実現し、重量物の買い控えに対する販売促進、店舗に預けた購入品の受け取り忘れ防止などにつなげる。ユーザーの利便性を検証し、2~5年を目途に事業化を進める考えだ。
実証実験で活用する無人搬送ロボットは、同社独自のAI(人工知能)技術「Maisart(マイサート)」を活用する。同AIにより、曜日や時間帯などによって変化する、ロボットの走行エリアである歩道の混雑度を、93.3%の予測精度で予測し移動所要時間を統計的に決定する。事前に搬送エリアをロボットが走行し、カメラなどから計測しておいた混雑度(単位面積あたりの人数)を予測するようモデルを作成する。
決定した移動所要時間をもとに、各店舗を経由して、指定された時刻から前後5分以内に観光客の受け取り地点に到着する搬送スケジュールを自動で作成するという。人と同じ 歩道を走行するため、混雑度が高いときは減速・一時停止による移動所要時間の変化も考慮する。同社によると歩道の混雑度を予測するのは業界初という。
三菱電機 情報技術総合研究所長の松下雅仁氏は「当社のAIは演算量を削減しておりコンパクトさが強みだ。今回実現したいソリューションは、時間通りに搬送するということが何よりも重要なので、『軽いAI』の特徴を生かして検証を進める」と語った。
また、同ロボットは複数のロッカーがあり1回の搬送で複数客に対応する。商品サイズとロッカー容量に応じてロッカーを割り当てる。同じ観光客の複数店舗での購入品を同じロッカーに格納するなど、最適化アルゴリズムを搭載。店員の購入品格納時や、観光客の購入品受け取り時に最低限のロッカー開閉で済む。
ロッカーの鍵の解除コードは、そのロッカーを開閉する店員と観光客のみに通知され、格納ミス、受け取りミスを防止する。なお、指定した受け取り時刻・場所はスマートフォンから確認や変更ができる。今回の実証実験では、到着予定時刻の30分前までなら急なキャンセルなどの変更に対応するという。
同社は今後、天候や施設のイベント情報なども外部データとして取り込み、無人搬送ロボットの予測精度の向上につなげる考えだ。「観光客の満足度、店舗の売り上げ向上につながるのか検証する。本当に需要があるのか、モノの移動にどこまでの価値があるのか見極めていく」(松下氏)