冥王星の複雑な地形は、低温で水などが地下から地表へ押し出される「氷の火山活動」が特有の仕組みで繰り返してできたとみられる、と米サウスウエスト研究所などの研究グループが発表した。探査機の観測データを基にした成果で、太陽系の他の場所にはみられないという。太陽からはるか遠い“氷の星”の変化に富んだ姿を理解する手がかりとなった。

  • alt

    米探査機「ニューホライズンズ」が捉えた冥王星。大きなハート形模様が目を引く(NASA、米ジョンズホプキンス大学、米サウスウエスト研究所提供)

冥王星は太陽から平均約59億キロのかなたにある、氷と岩石の星。長く惑星の一つとされたが月より小さく、似た天体の発見が続いたことなどから、2006年に惑星の定義が明確化され、「準惑星」となった。15年には米探査機「ニューホライズンズ」が史上初めて接近。大気中のメタンによる赤みを帯びた姿や、変化に富んだ地形、氷でできた巨大なハート形模様などが目を引いた。

研究グループはこのハート型模様の一部「スプートニク平原」の南西部に注目。高さ1~7キロ、幅30~100超キロの複数のドームが合体した地形、高台や低地などの複雑な構造が存在していた。天体が衝突してできるクレーターがほとんどないことから、これらはまだ時間が経っていない若い地形であると判明。極寒と希薄な大気圧が、表面の水を急速に凍結させていた。また、こうした巨大な地形ができるには、材料の物質が大量にあるはずだ。

これらを考え合わせ、星の内部が比較的最近まで熱を持ち氷の火山活動が続いたことで、水の氷を含む物質が地下から表面へと大量に押し出され堆積した、と研究グループは判断した。一方、氷河などによる浸食の痕跡は見られなかった。

  • alt

    複雑な地形の仕組みが見えてきた冥王星。青く塗られた部分は、火山活動があったとみられる地域(NASA、米ジョンズホプキンス大学、米サウスウエスト研究所など提供)

冥王星は太古に熱源が失われた“死んだ星”とみられてきた。しかしニューホライズンズの探査で豊かな地形が判明。内部に何らかの熱源があるはずで、その正体などの謎が浮上している。

米サウスウエスト研究所でニューホライズンズを担当する惑星科学者、ケルシー・シンガー氏は「こうした(ドーム状地形のような)構造はこれまでのところ、冥王星にしか見られない。氷の火山や地質活動に関する知識を深められた好例だ」と述べている。成果は英科学誌「ネイチャーコミュニケーションズ」に3月29日に掲載された。

  • alt

    米探査機「ニューホライズンズ」の想像図(NASA提供)

関連記事

太陽系外縁の遠い天体は雪だるま形だった 新年早々に米探査機「ニューホライズンズ」が捉える

AIがNASAのデータを分析し新たな太陽系外惑星を発見