アマゾン ウェブ サービス ジャパンは4月11日、新たなデジタル人材育成のプログラムに関する記者説明会を開催した。同日、調査レポート「日本とAPACの変化し続ける労働環境におけるデジタルスキルとその重要性」も公開した。
初めに、代表執行役員社長 長崎忠雄氏が登壇し、「われわれは人材を育成し、DX(デジタルトランスフォーメーション)を支援することがミッションだと考えている。デジタル技術を活用したデジタル人材の育成が喫緊の課題となっているが、クラウドに関するスキルは特に重要と考えている」と、同社がデジタル人材の育成に注力する背景を説明した。
長崎氏は、政府から今年2月に230万人の人材が必要という発表を引き合いに出し、「政府の発表を実現するには、新しい施策が必要。われわれは、それを『Pathfinders』(道を切り開く者)と考えており、官民すべてが目指すべき姿だと思う。昨年発表された世界のデジタル競争力ランキングで、日本は28位と、一昨年から1つ順位を落とす結果だった。日本は、日本に日本に適したやり方であらゆるものをトランスフォームする必要があり、できるだけ早く始めなければいけない」と語った。
さらに、経営層の理解がデジタル人材育成の成功のカギとなるとして、「デジタル人材育成において、一番大切なことはリーダーシップ。真のトランスフォーメーションを実現するには、人への投資が重要。経営層に対し、人への投資を訴えかけたい」と、長崎氏は訴えた。
続いて、トレーニングサービス本部 本部長 岩田健一氏が、新サービスと調査結果について説明した。AWSは、学生および非IT人材がIT人材になれるよう、デジタルスキルに関するさまざまなトレーニングを提供している。
今回提供を開始するのは、デジタル人材育成包括支援プログラム「AWS Skills Guild」だ。同サービスは、ユーザーのビジネスゴール達成に向けて、必要なデジタルスキルの精査とそれを習得するための 人材育成計画立案から 支援するもの。
岩田氏は、「デジタル人材の育成において特に重要なことは、学び続ける文化を作っていくこと。そのために、AWS Skills Guildでは、学び続ける文化の醸成に向けて、組織のビジョンを理解してもらうことから始める」と語った。
「AWS Skills Guild」で提供するサービスのうち、クラウドテクノロジーに関するトレーニングや認定取得は有償となるが、プランニングなどは基本無償とのことだ。なお、サービスの提供受けるにあたっては経営層との会話が条件となっている。
また、長崎氏も、デジタル人材育成における経営層の理解の重要性を強調していたが、経営トップによる人への投資へのコミットメントを確立するため、AWS東京エグゼクティブ・ブリーフィングセンター( EBC )では、経営層向けのワークショップも開催している。
一方、調査レポート「日本とAPACの変化し続ける労働環境におけるデジタルスキルとその重要性」は、日本、オーストラリア、インド、インドネシア、ニュージーランド、 韓国、シンガポールの雇用主2,166人と労働者7,193人を対象に実施した調査結果をまとめたものだ。 • 同調査により、日本の労働者の78%がコロナ禍に伴う仕事の変化に対応するため、より多くのデジタルスキルが必要になったと回答したが、デジタルスキル習得を支援するためのトレーニング計画を策定している企業・団体は全体の5分1未満であることが明らかになった。
また、2025年までに最も需要の高いデジタルスキルを聞いたところ、クラウドとサイバーセキュリティ関連スキルという回答が多い結果となった。
岩田氏はさまざまな企業を見てきた中で、人材育成の課題が集約されてきたと述べ、AWSが考えるデジタル人材育成の課題として、以下の3点を挙げた。
- 人材育成に関する市場変化に関して、経営層が理解不足
- 企業にデジタル人材育成ノウハウが少ない
- テクノロジーアップデートのスピードが速すぎる
これらの課題に対し、AWSは以下のような解決策を提供していくが、これらを提供するのが「AWS Skills Guild」となる。
- 人材育成に関する理解を深めることを目的とした経営層向けの特別セッションを開催
- 人材育成コンサルタントによる育成計画立案支援
- アップデートに追従する仕組み(組織)の構築支援