2022年1月下旬から2月下旬にかけてキオクシア四日市工場ならびに北上工場で生じた汚染原材料に起因する製造ラインの一部稼働停止を受け、Appleが「iPhone」に搭載する3D NANDフラッシュメモリの安定調達に向け、複数サプライヤから調達する動きを受け、中YMTCがApple向けNANDの試験生産を進めていると米Bloombergをはじめとした複数の海外メディアが報じている。
Bloombergによると、キオクシアの製造ライントラブルのみならず、新型コロナや戦争などといった予期せぬ事態によって半導体が入手困難になりかねないリスクを減らすことを目的に、Appleは新たなサプライヤの模索を進めている模様であるが、「YMTCとは最終合意には至っていない」という。YMTCによるApple向けNANDのサンプル生産が正式な契約につながる保証はなく、現時点ではAppleがサプライヤリストへの追加を検討する候補のうちの1社との見方が有力だという。
また、台湾Digitimesでは、YMTCは128層の3D NANDに対するAppleの検証試験をクリアし、早ければ5月にもAppleへの少量出荷を開始し、iPnone SE(第3世代)の一部に採用される可能性を指摘している。ただし、Bloombergでは、米中経済摩擦およびロシアのウクライナ侵攻における中国のロシア寄りの姿勢といった現状を鑑みると、YMTCとの提携はAppleにマイナスに作用する可能性があるとの見方を示している。
台湾の有力経済紙である経済日報では、YMTCがiPhoneのサプライチェーン入りに成功した場合、コントローラICサプライヤの台Phison Electronics(群聯)、NANDモジュールのADATA Technology(威剛)のようなYMTCのパートナーである台湾半導体企業が恩恵を受けるとの見方を伝えているほか、台湾の自由時報は、米Morgan Stanley台湾法人の調査情報として、もしもYMTCのメモリがiPhoneに採用されれば、YMTCの主要製造装置サプライヤである洗浄装置メーカーShengmei Semiconductor(ACMR)およびドライエッチング装置メーカーChina Microelectronics(AMEC)が主な受益者となり、長期的にはPhisonにも利益をもたらすとの分析結果を紹介している。AppleはNANDのドライバを自社設計チップに搭載しているため、Phisonチップが採用される見込みはないが、YMTCの評判が上がれば、Phisonチップを採用するスマートフォンサプライが増えると見られるためだという。
なお、Morgan Stanleyの調査によると、現在のiPhone向けNANDサプライヤとしては、SK Hynix、キオクシア、Western Digitalが含まれており、YMTCもAppleのNANDサプライヤリストに含まれる可能性があるとしている。実際に搭載されれば、最初にiPhone SE(第3世代)ということになるが、2022年秋に発売される見込みの次世代iPhoneにも搭載される可能性もあるとしている。Appleが採用することになれば、今後、YMTCの技術が成熟するにつれて、より多くの中国のスマートフォンおよびPC機器メーカーがYMTCのNANDを採用するものとみられる。