ラクスルのグループ会社であるノバセルは4月6日、1900万人のモニタに企業から直接アンケート調査を実施できる調査サービス「ノビシロ」を発表した。同日にはオンラインで記者発表会が開かれ、同サービスを含めた3つの新サービスと今後の事業戦略が紹介された。同社は、テレビCMに特化したサービスに加えて、企業のマーケティング支援のサービスを複数展開する方針を示した。

  • ノバセルはテレビCMのほか、戦略立案・リサーチ、Web広告など企業のマーケティングを支援する方針だ

ノバセルは、2022年2月にラクスルから分社・独立した企業で、広告代理店事業とSaaS事業を展開している。これまで、テレビCMの企画・制作・放映・効果分析サービス「ノバセル」のほか、テレビCMの効果分析ツールをSaaSで提供する「ノバセルアナリティクス」を提供してきた。今回、同社は企業のマーケティング戦略を支援する3つのサービスを提供する。

1900万人に直接アンケート調査できる「ノビシロ」

1つ目が「ノビシロ」だ。同サービスはモニター総数1900万人を抱えるモニタスと連携しており、調査会社などを通さずにモニターへ直接アンケート調査を実施することが可能だ。費用は1調査あたり2万円からで、4月21日よりサービスの提供を開始する。

ノバセルによれば、5問・100名に実施する調査の結果を最短20分で得ることも可能だという。例えば、会議で出たアイデアのクイック調査や、パッケージ・広告などのクリエイティブに生かすトレンドのチェックなどの際に活用できる。

加えて、定量・定性調査の設計や調査結果の分析、マーケティング戦略設計など、マーケティング活動全般に、ノバセルのマーケターが伴走してサポートするサービス「ノビシロ PRO」も同時に提供開始する。同サービスの費用は、月額費用50万円(税別)で、最低契約期間は6カ月。

  • 「ノビシロ」の活用イメージ

「指名検索数」で競合他社含めテレビCMを分析「ノバセルトレンド」

2つ目が「ノバセルトレンド」だ。同サービスでは、競合他社を含めた企業のテレビCMの分析、効果測定が可能だ。CM効果は企業比較だけでなく、ブランドやクリエイティブ、放映枠別に比較することも可能だ。

  • 「ノバセルトレンド」のイメージ

ノバセル独自の分析手法を基に、CM放映時間の前後3分に、大手検索エンジンで指名検索(企業名、店名、商品・サービス名、ブランド名などの固有名詞による検索)がどれだけ増えたかをCM効果として計測。他社を含めたCM放送後の指名検索の動向を把握することで、競合分析や業界トレンドに生かせるという。

  • テレビCM放送後のWeb検索エンジンでの「指名検索数」を分析する

Cookie規制により、広告への3rd Pparty Cookieの利用が制限される。そうした中、ノバセルはブランドや製品などのマーケティングにおいては、動画メディア視聴後に自然と想起されて検討対象に入る、または比較されずに指名買いされることが重要と考え、今回のサービスでCM効果を測定する指標として指名検索数を採用した。

成果報酬型でテレビCMとWebマーケティング「X-COMMIT」

3つ目が成果報酬型マーケティングプラン「X-COMMIT」(クロスコミット)だ。同サービスでは、成果報酬型でテレビCMの企画・制作・放映・効果分析とWebマーケティングのサービスをセットで提供する。

  • 「X-COMMIT」のサービスイメージ

テレビCMの成果達成度合いは指名検索数、Webマーケティングの成果達成度合いはROAS(Return On Advertising Spend)で測る。

テレビCMとWebマーケティングの代理店が異なることから、オフラインとオンラインをまたいだマーケティングの全体最適化や適切な評価ができない現状を踏まえ、ノバセルは同サービスを提供するという。

  • 「X-COMMIT」の成果報酬の仕組み

広告効果を把握できて、マーケティングを使いこなせる世界を目指す

ノバセル 代表取締役社長の田部正樹氏は、「当社はテレビCMを活用し急成長を遂げることができた。しかし、2022年3月に600社を超える企業に調査したところ、CMを実施する前段階のマーケティングに課題を抱える企業が多いことがわかった。自社にマーケティングのノウハウがなく、顧客ニーズが把握できていないうえ、社内に戦略を立てられる人材もいないため、マーケティング戦略を立案・実施できない。また、テレビCMのコストに不透明感を抱く企業も多かったことから、手始めにそれらの課題を解決する3つのサービスをリリースした」と新サービスのリリースの意図を説明した。

  • ノバセル 代表取締役社長 兼 ラクスル 取締役 CMO 田部正樹氏

田部氏は今回の記者説明会で、従来のビジョン「運用型テレビCM市場の創造」に加えて、「マーケティングの民主化」を自社のビジョンとして新たに掲げた。今後は、テレビCM関連のサービスに、戦略立案・リサーチ、Web広告までをカバーするサービスを加えて、「マーケティングプラットフォーム」として提供していくという。

「広告業界のメインプレーヤーは大手クライアントと広告代理店と言われるが、全国の企業の9割以上を占める中小企業も広告を活用できるよう、マーケティングの民主化を進めたい。テレビCMに限らず、すべての広告、マーケティング活動に活用できるサービスを提供し、誰もが正しい広告効果を把握できて、マーケティングを使いこなせる世界を目指す」(田部氏)