富士通は4月6日、スーパーコンピュータ「富岳」や量子インスパイアード技術を活用した「デジタルアニーラ」に代表される高度なコンピューティング技術と、AIなどのソフトウェア技術を、誰もが容易に利用できるサービス群「Fujitsu Computing as a Service」(以下、「CaaS」)として新たに体系化し、今年10月より提供開始すると発表した。
「CaaS」は、サステナブルな世界の実現を目指す新事業ブランド「Fujitsu Uvance」を体現するクラウドサービスのラインアップの位置づけとなる。執行役員SEVP CTOのヴィヴェック・マハジャン氏は、「当社は、コンピューティング、ネットワーク、AI、データ&セキュリティ、コンバージング・テクノロジーの5つの技術領域に研究開発リソースを集中することを掲げているが、今回の発表はコンピューティングに属するもの。われわれは顧客がコンピューティングを資産として持つべきではないと考えている」と説明した。
「CaaS」は、HPC、量子インスパイアード技術、量子コンピューティングといった技術から構成される。マハジャン氏は「コンピューティングは、量子コンピューティングに向かっている。われわれは両氏に対し、ハードとソフトの双方を提供しており、顧客の課題解決に対し、テクノロジーによって最適な答えを出すことを支援する」と語った。
「CaaS」の詳細については、執行役員EVPの高橋美波氏が説明を行った。同氏は、「社会と企業は変化を続けており、増え続けるデータ 複雑化するリスク要因 短くなる意思決定の時間など、解決すべき課題が複雑化している。こうした課題を解決する技術が必要されている。ノイマン型と非ノイマン型のハイブリッドコンピュティングが重要になってくると考えている」と述べた。
「CaaS」は、API基盤、API、コンサルティングサービス、チューニングサービスから構成される。APIのラインアップには、HPCクラウド(FUJITSU Supercomputer PRIMEHPC FX1000など)、DAクラウド(デジタルアニーラ)、AIクラウドがある。各サービスはシームレスに連携しており、個別のサービスを意識することなく高度な最新技術を利用できる。
「FUJITSU Supercomputer PRIMEHPC FX1000」をクラウド型で提供する「Fujitsu クラウドサービス HPC」が4月6日より、一般企業や団体向けに販売が開始される。今年10月より「デジタルアニーラ」やAIのクラウドサービスの提供が予定されている。
髙橋氏は、HPCサービスの特徴として、「富岳のテクノロジーによる高速処理」「オンデマンドHPCサービス」「プロフェッショナルサポート」を挙げた。同サービスは富岳と互換性を持つハードウェアとソフトウェアが採用されており、大規模なシミュレーションの高速処理が行える。
また、同サービスではHPCで利用するコンピュートノード、ログインノード、ジョブスケジューラ、ストレージ、アプリケーションソフトウェア一式が事前にセットアップされているため、必要な時に必要な分だけ利用可能。
今後は、「CaaS」の先行事例として、製造業向けの設計最適化や創薬効率化など、機関や企業との実証実験が予定されている。高橋氏によると、特定の顧客と連携してチューニングを実施してリファレンスを作って横展開していくことを考えているという。
HPCサービスの料金は、3つのタイプのノード「HPCバジェット」、ストレージ、ネットワーク機器の接続、ログインノードなどによって決まる。富士通のシミュレーションによると、必要最小限の構成の価格は1アカウント10万円程度だという。