経済産業省傘下の新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、人工衛星の画像データなどを用いて港湾などの物流拠点でサプライチェーン向けの解析サービスのアイデアやシステム開発を募る「NEDO Supply Chain Data Challenge」事業の募集を3月18日より開始した。

同事業は、NEDOとしては初の懸賞金事業となり、応募の締め切りは5月17日の正午となっている。

NEDOイノベーション推進部は、同事業を正確には「サプライチェーンの迅速・柔軟な組換えに資する衛星を活用した状況把握システムの開発・実証」事業として、募集活動を本格化させている。

今回、NEDOからは活用する人工衛星の画像データといったさまざまなデータ群が提供される予定で、「衛星データの提供は、経済産業省による“政府衛星データのオープン&フリー化およびデータ利活用促進事業”の取り組みとして提供されているTellus(テルース)のデータプラットフォームを利用する。このデータプラットフォームは、各衛星から得られるさまざまなデータ群になっている」と、経産省製造産業局航空機武器宇宙産業課 宇宙産業室は説明した。

そして、このTellusは、さくらインターネット(大阪市北区)が運営するデータプラットフォームとなっている。

  • TellusのWebサイト

    TellusのWebサイト(出典:さくらインターネット)

イノベーション推進部の吉田剛部長は「NEDOでは初めての懸賞金事業となるため、NEDO Supply Chain Data Challengeと名付けた」と、その背景を説明する。

  • 「NEDO Supply Chain Data Challenge」を実施するイノベーション推進部の責任者の吉田剛部長

    「NEDO Supply Chain Data Challenge」を実施するイノベーション推進部の責任者の吉田剛部長

今回は、2部門で募集をしており、「アイデア部門」では、衛星データなどの利活用によってサプライチェーンマネジメントにおける課題の解決を可能とする技術・ソリューションに関するアイデアを募る。

吉田部長は「普段、NEDOが助成事業や委託事業を実施している場合には、すでにNEDOとコンタクトを取った経験を持つ既存の企業からの応募が多いが、今回はそういった経験がない個人やベンチャー企業などから斬新なアイデアを募りたいという考えから懸賞金事業とした」と、その背景を明かす。

もう1つの募集部門である「システム開発部門」では、テーマ(1)として港湾におけるコンテナ物流の渋滞に起因するサプライチェーンへのインパクト推定と可視化サービスの提供を募集し、テーマ(2)として大規模風水害などの災害に起因するサプライチェーンへのインパクト推定と可視化サービスの提供を募る予定だ。

吉田部長はテーマ1に関して「港湾とは、代表的な物流拠点である東京湾岸(大井ふ頭など)や米国ロサンゼルス市、韓国釜山市、シンガポール市などの港湾を想定し、コンテナ船が入港し、大型クレーンがコンテナを荷下ろしや荷積みを行い、トラックが物資を運ぶ際の物流システムを高効率化するための衛星データを駆使したサプライチェーン構築とこれを高効率化する可視化サービスの提供を求めている」という。

テーマ2の大規模風水害などの災害時に起因するサプライチェーン高効率化は、「例えば2019年10月中旬に日本に到来した台風19号などによる大水害・大浸水などに対応するサプライチェーン構築を求めたもの」という。この場合は、企業間の取り引きデータや大水害・大浸水などによるその地域の工場や道路の被害状況を示す衛星データなどから「対応策といったサプライチェーンへのインパクト推定と可視化サービスの提供を求めている」という。

吉田部長は「懸賞金という新しい仕掛けによって、斬新なアイデア・システム・解析サービスなどが浮上することを期待している」と説明する。

なお、応募者には、衛星データをはじめとしたさまざまなデータがNEDOから提供されるが、そのデータの詳細などに関しては、イノベーション推進部に問い合わせをしてほしいとした。