東京大学(東大)と堀場製作所は、「環境調和型エネルギーシステム社会連携講座」を4月1日に開設したことを4月5日に発表した。

同講座では、東京大学の予測技術(AI)と、堀場製作所が長年培ってきた分析・計測技術を掛け合わせ、研究開発現場におけるエネルギー消費量を可視化し、最適な利活用へとつなげる「エネルギーマネジメントシステム」の構築に取り組む共同研究を実施するという。なお、設置期間は2025年3月31日までの3か年の予定。

同講座を通じ構築したエネルギーマネジメントシステムは、2025年の事業化を目指し、自動車をはじめとする産業界の研究開発施設へと幅広く展開。カーボンニュートラルの実現に向け、CO2をはじめとした温室効果ガス(GHG)の排出を最小化した研究開発環境を提案していくという。

  • 堀場と東京大学が同共同研究を通じてめざす姿

    堀場と東京大学が同共同研究を通じてめざす姿(提供:堀場製作所)

また、確立したエネルギーマネジメントシステムを応用し、仮想空間上でソフトウェアのみを用いたエネルギー利用のシミュレーションを可能とし、研究開発施設の建設における前段階から最適な設備提案を行うサイバーフィジカルシステムとして、より発展的なビジネスへ展開することも目指すとしている。

エネルギーマネジメントシステム構築に向けた、両者の具体的な取り組みは以下4点だ。

研究開発の現場を想定したエネルギー消費状況の見える化

堀場が持つバッテリーや燃料電池、内燃機関といったユニット単体から完成車に至るまでの複合的な試験を行うことができる施設「E-LAB(イーラボ)」。同施設の分析・計測装置および付帯設備の計測データを一括管理する堀場のデータマネジメントシステム「STARS Enterprise(スターズエンタープライズ)」と東京大学の予測技術を掛け合わせ、CO2排出量、電力使用量、設備の稼働状況、設備発熱量などのさまざまなデータを可視化する実証実験を行う予定だとしている。

最新の技術動向に適合するアップデート

電力の取り引きを行う需給調整市場において、需給を一致させるために必要な電力である「調整力」は、応動時間(指定した出力値へ達するまでに要する時間)の短縮化が求められている。

そこで、エネルギーマネジメントシステムのエネルギー最適利用によって生まれる余剰電力を、電力系統における調整力として活用することも念頭に、電力市場の進化へフレキシブルに対応する拡張性強化に取り組むとしている。

具体的には、変動電力入力に対する蓄電デバイスの特性把握や天気・周囲環境データを用いた事業所内再生可能電源の出力変動予想の高度化、電力需要予測の高度化・機器制御、使用負荷・発電負荷変動吸収と需給調整市場への調整力提供などを通して検証していくとのことだ。

また、E-LABの設備を活用・拡充し、水素エンジンや、水電解による水素製造など、カーボンニュートラル実現に向けた最新技術の分析・計測ニーズにも対応していくという。

データの検証・蓄積を通じたエネルギーマネジメントシステムの構築

上記の取り組みを通じて蓄積した実験データを総括し、研究開発施設でのあらゆる稼働状況に対応した、最適な電力供給や排熱の再利用などを行うエネルギーマネジメントシステム構築へとつなげていくとしている。

両者の交流による人材育成

共同研究や研究成果の学会発表などを通じた継続的な交流により、エネルギーマネジメントに関する研究開発をリードし、次世代を担う高度人材育成や、蓄積したノウハウを役立て、新たな産学連携へつなげることで、持続的な技術革新へ発展させていくとしている。

  • 記者会見での記念撮影

    (左から)同講座の代表教員である東京大学大学院 工学系研究科の熊田亜紀子教授、東京大学大学院工学研究科長・工学部長の染谷隆夫教授、堀場製作所の堀場厚 代表取締役会長兼グループCEO、堀場製作所の中村博司 コーポレートオフィサーCTO兼ビジネスインキュベーション本部本部長(提供:堀場製作所)