富士通は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が運用する地球周回軌道上のスペースデブリの状況を把握する「JAXA宇宙状況把握(SSA:Space Situational Awareness)システム」において、スペースデブリの軌道を計算する解析システムを新たに構築し、4月1日より筑波宇宙センターにて稼働を開始したと発表した。
同社は、1990年代初頭のJAXAによるスペースデブリ対策に関する検討開始当初より小惑星探査機「はやぶさ2」などでも使用されている軌道計算技術などを活用しながら、現在のSSAシステムの前身となるスペースデブリに関するシステムを構築し、技術を蓄積してきた。
JAXAが運用するSSAシステムは、レーダーと光学望遠鏡、解析システムで構成されており、同社が今回新たに構築した解析システムはSSAシステムの中枢として、スペースデブリを効果的に観測するための観測計画の作成、取得した観測データの管理、また、接近や衝突回避を支援する軌道計算などの解析を担うという。
SSAシステムのさらなる強化に向けて今回JAXAが刷新したレーダーでは、より小さな物体を観測できるため、1日あたりの観測可能な物体数が従来の10倍以上に相当する約1万件におよぶため、大量の物体を最大限に観測できるよう、各物体の観測結果や観測データの処理結果も考慮して常時最適な観測計画を作成できる解析システム用のアルゴリズムを新規に開発。
また、処理能力も従来比50倍以上の向上を図り、膨大な観測データのタイムリーな処理を実現し、衝突確率や回避に必要な情報をJAXAの衛星運用者に速やかに提供可能とし、迅速な危険把握に貢献するとしている。
加えて、これまで解析運用者が主に手動で行っていた観測計画の策定や観測データの処理など定常的な作業を自動で行う機能を新規に開発し、解析運用者の作業を処理結果の確認と緊急時の対応に集約し、運用負荷の軽減と効率的な運用を支援するという。
JAXAのSSAシステムのほか、国が運用管理しているSSAシステムとの連携が可能な機能も新たに搭載しており、国のSSAシステムからの観測要求も考慮して効果的な観測が出来る仕組みだとしている。