2022年3月25日。北海道富良野市役所にある大会議室で、8人の学生が同市市長らに向かってある提案をしていた。
「ゴミのリサイクル率を向上させるために、正しい分別を教えてくれるアプリを開発しましょう」
「コロナ禍で落ち込んでいる『ふらのワイン』の売上回復のために、EC事業を見直しましょう」
彼らは思い付きで提案している訳ではない。問題を抱える現地を視察し、ツールを使って富良野市が持っているさまざまなデータを分析、得られた結果から仮説を立てた。そして、チームメイトとディスカッションして絞り出したアイデアを市政に投げかけた。
学生が富良野市長に実証実験案をプレゼン
富良野市、北海道大学(北大)、日本オラクルは、3者共同のプロジェクト「富良野市のスマートシティ推進支援」を2021年8月より開始している。スマートシティの推進プロジェクトにおいて“産官学”による取り組みは珍しく、北大の学生が富良野市の課題解決に向けた提案を行うといった新しい試みが同プロジェクトの肝だ。
富良野市では、2020年4月に「スマートシティ戦略室」を新設し、デジタル技術を活用して、「行政事務の効率化」「市民の利便性向上」の2軸で取り組みを実施している。例えば、ペーパーレス会議の導入で年間約5万2,000枚の紙を削減、RPAの導入で年間合計5,138時間もの事務作業を軽減、押印が伴う届出手続に関しては92.8%を廃止した。
市民の利便性向上に向けた取り組みの一例としては、データを活用した除排雪作業の見える化および効率化を目的とした「IoT除排雪効率化実証実験」がある。日本オラクルのクラウドサービスを使って、除排雪作業を見える化し、除排雪車両の走行ルートの最適化、作業時間やコストの削減などの効率化を図った。
そして、産官学で取り組んでいる今回のプロジェクトには、北大が実施している教育プログラム「北海道大学スマート物質科学を拓くアンビシャスプログラム(SMatS)」に所属する博士課程の学生8名が手を上げて参加した。「博士課程DX教育プログラム:北海道富良野市のスマートシティ推進支援」と題して、2021年8月から4回のワークショップを実施し、2022年3月25日に富良野市への最終プレゼンを実施した。
日本オラクルは、参加学生にコーチング、デジタル技術の活用およびデータ分析のトレーニングを実施。参加学生は富良野市から提示された2つの課題に対してオラクルのクラウドサービスを活用したデータ分析および可視化を通して、施策の提案を行う。富良野市は、同市のスマートシティ推進施策の一環として、学生たちが導き出した施策案を参考に実証実験の検討を行うといった流れになっている。
日本オラクルは、大学向けの無償クラウド提供プログラム「Oracle for Research」を北大に提供。北大は、セキュアにデータ分析を行える「Oracle Autonomous Data Warehouse」や「Oracle Analytics Cloud」などの「Oracle Cloud Infrastructure」のクラウドサービスを活用した。
8人の学生は「ワインチーム」と「リサイクルチーム」の2チームに分かれて、それぞれのテーマで富良野市が抱える課題に対して解決策を考えた。では一体、学生たちは最終プレゼンでどのような提案をしたのだろうか。彼らのプレゼン内容をお届けしたい。