情報処理推進機構(IPA)は4月4日、「DX(デジタルトランスフォーメーション)実践手引書」を改訂した「ITシステム構築編 第2.0版」(以下、改訂版)を公開した。改訂版では、企業がDXにおいて目指す変革の規模や現時点の成熟度を指標化するための仕組みや、DXとセキュリティの関係性、外部サービスの活用方法などを新たに紹介している。
改訂版の第2章「DXを継続的に進めるための考え方」においては、DXで目指す「変革規模」と「組織成熟度」の指標を定義した。
「変革規模」では、既存事業内での変革を目指すオプティマイゼーションと、既存事業の枠組みを超えた変革を表すトランスフォーメーションに分け、計7段階の指標を示した。オプティマイゼーションには部門内や取引先間での業務変革を、トランスフォーメーションには新商品やサービスを通じた市場および社会の変革を含んでいるとのことだ。
一方の「組織成熟度」では、DXを進める上で必要と考えられる経営体制や環境準備、技術力などの個別要素を集約し、その達成度を組織成熟度として定義した。経営、事業、技術、人材・組織のテーマに対し39個の指標を定めている。
第4章「あるべきITシステムとそれを実現する技術要素」では、DX実現のために組織内で独自に構成するITシステムについて、各要素の設計と実装にあたり必要となるセキュリティの考え方を説明している。クラウド上でのアプリケーション構築や外部サービスとの連携において必要となるセキュリティの考え方を示している。
また、同章では各社のビジネス競争力につなげる「社会最適」を実現するための外部サービスの活用方法についても述べている。外部サービスをうまく活用してITシステムを構成することで、割り勘効果によってITコストを最適化できるとのことだ。
割り勘効果とは、同じソフトウェアを複数の企業が共通で使ったり汎用的な外部サービスを利用したりすることで、個々の企業が負担すべき開発コストや人員、リスク対策コストが低減される効果だ。
そのほか、改訂版ではDX実現のためのあるべきITシステム「スサノオ・フレームワーク」とクラウド、IoT、APIといった技術要素との関連についても追加している。「スサノオ・フレームワーク」はあるべきITシステムを実現する技術要素群であり、モノリシックなシステムであるヤマタノオロチを一つ一つ切り離して、使える部分は形を変えて再生させることで、害となっていた存在を価値のある存在に変化させるという概念だ。