英国に本拠を置く多国籍情報プロバイダであるInformaのハイテク市場動向調査事業(ブランド名:Omdia)は先般、2021年における世界の半導体企業の売上高ランキングトップ15を発表したが、本誌では独自に同社日本法人に対して取材を実施。日本の半導体企業に絞った売上高総額およびランキングトップ15(実績に基づく確定版)が判明した。
2021年における日本の半導体企業売上高総額は、前年比19.1%増の518億ドルに達したという。その結果、全世界の半導体企業売上高に占める日本半導体企業売上高の割合は8.8%となった。この割合は、1988年には50.3%ほどであったが、2019年に10.0%にまで低下、このままいくと2030年にはほぼ0%になってしまうと、経済産業省は半導体戦略に関する公開文書で訴えているが、10%はもはや過去の数字であり、すでに1桁台へと突入していることは注視すべき点である。
また、世界の半導体業界全体の伸びが前年比24.2%増だった伸びたのに対し、日本の半導体企業に限れば同19.1%増と5ポイントほど成長率が低いことも注目される。
2021年の順位は、前年比でみると2020年に2位だったソニーセミコンダクタソリューションズと同3位だったルネサス エレクトロニクスの順位が入れ替わった以外は変動がなく、ほとんど固定化されている。また、上位15社中、10位のソシオネクストのみファブレスで、それ以外はIDMという構図となっている。ただし、ファウンドリは除外されている。これは、製造受託の売上高が製造委託元の売上高と2重計上されてしまうためで、例えば東芝系ファウンドリであるジャパンセミコンダクター(元東芝大分工場、北上工場)の売上高は東芝社内の振替分を含み900億円台と予測されるため、日系企業としては11位前後に相当するとみられる。
欧米企業の連続買収で成長するルネサス
2021年における日本の半導体企業売上高トップは、例年通りキオクシア(元東芝メモリ)で、日本半導体企業で唯一100億ドルの大台を達成している。世界ランキングでは12位に位置している(2020年は11位)。
同社の2021年半導体売り上げは、NAND市場が同23%増と大きく成長したことを受け、同20.4%増と成長したが、競合のSamsung Electronics、SK Hynix、Micron TechnologyはNANDのみならず、より高い成長率を達成したDRAMも製造しており、キオクシア以上の高い成長率を達成している。
ソニーを抜いて2位に浮上したルネサスは、世界ランキングでも、2020年の19位から2021年は15位まであがってきた。欧米企業の積極的な買収が奏功しており、それにともなう製品ポートフォリオの戦略的拡大効果が大きいとされる(2021年の売上高には同年、買収が完了した英Dialog Semiconductorの売上高も含まれる)。
一方、3位に転落したソニーは、Apple(iPhone)に次ぐ大口顧客である中Huaweiが米国政府のエンティティリストに載ったことにより、同社に向けたCMOSイメージセンサの輸出が規制された影響が大きく、他社への拡販に注力したものの、Huawei向けの機会損出を補いきれなかった模様である。その結果、2021年の世界ランキングでは、前年の14位から18位まで後退している。
なお、日本半導体企業の上位3社(キオクシア、ルネサス、ソニー)だけで、日本半導体業界全体の6割以上のシェアを有している。また、東芝、三菱電機、サンケン電気、富士電機などが、生き残りをかけてパワー半導体に注力しているほか、富士通の半導体子会社とパナソニックのシステムLSI設計部隊が合併して誕生したファブレスIC設計会社であるソシオネクストは、世界ファブレスランキングトップ10外と日本のファブレス業界は、米国台湾勢が活躍する世界市場でまったく存在感を示せていない。
このほか、13位のデンソーはトヨタ自動車のTier1企業で、TSMCの熊本工場であるJapan Advanced Semiconductor Manufacturing(JASM)に対しソニーとともに少額出資を決めたが、どのような半導体デバイスをそこで製造するのかについて明らかにしていない。また、6位の日亜化学、11位の浜松ホトニクス、15位のスタンレー電気は、オプトエレクトロニクス(光学)デバイスビジネスに強みを発揮している。