科学技術振興機構(JST)の濵口道成理事長(71)は3月31日をもって任期満了で退任し、物質・材料研究機構の橋本和仁理事長(66)が4月1日付で新理事長に就任する。橋本氏は30日、JSTで記者会見を開き、「科学技術・イノベーション基本計画の中核を担う機関として、『新たな価値創造』に努める。研究者、マネジャー、政策を作る側としてやってきたこれまでの経験を生かしていきたい」と抱負を述べた。
橋本氏は「世界は歴史的な転換点を迎えており、科学技術はその重要性をますます増している。そして、わが国は大学の国際ランキングが下がるなど研究力の低下が叫ばれている。そうした中で、JSTの役割は極めて大きい」との認識を示し、「これまではJSTから多くの研究費をいただき、注文や提言をする立場でもあったが、今回はその責任を取るために(理事長職を)引き受けるべきだと思った」と語った。
橋本氏は今後の課題としてまず、これまでパッチワーク的に作り上げられてきたファンディングを政策目的に合致するように見直すと述べた。併せてシンクタンク機能を活性化。JST職員のキャリアパスの充実も掲げた。記者からの質問に答える形で、10年後のファンディングのあり方をステークホルダーと共有したいとの思いも明らかにした。
橋本氏は1980年東京大学大学院理学研究科修士課程修了。東大工学部講師、助教授などを経て、97年教授。専門は光触媒などの物理化学。2004~07年同大先端科学技術センター所長。16年物材機構理事長に就任した。総合科学技術・イノベーション会議などの議員として、科学技術政策のあり方について積極的に発言してきた。
JSTのプロジェクトでは、戦略的創造研究推進事業のERATO「橋本光エネルギー変換システムプロジェクト」(2006~12年)を率いたほか、さきがけ、CREST、ALCAの研究総括や事業総括、未来社会創造事業の領域運営統括などを歴任している。