ロシアによるウクライナへの侵攻が続く中、ロシア国営宇宙企業ロスコスモスは2022年3月19日、3人のロシア人宇宙飛行士を乗せた「ソユーズMS-21」宇宙船を打ち上げた。

宇宙船は約3時間後に国際宇宙ステーション(ISS)に到着、3人は米国や欧州の宇宙飛行士と合流した。一方、3人がウクライナの国旗の色と同じ、黄色と青の服を着用していることが話題となっている。

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    国際宇宙ステーションに到着した、3人のロシア人宇宙飛行士。黄色と青の服を着ていることが話題となった (C) Roskosmos

同じ大学の同窓生による宇宙飛行

ソユーズMS-21を搭載したソユーズ2.1aロケットは、日本時間3月19日0時55分18秒、カザフスタン共和国にあるバイコヌール宇宙基地から離昇した。

ロケットは順調に飛行し、約9分後にソユーズMS-21を分離。ソユーズMS-21はその後、軌道変更を重ねながら徐々にISSへと接近した。

ISSとのドッキング直前に自動ランデヴー・ドッキング・システムが不具合を起こしたものの、手動でのドッキングに切り替え、打ち上げから約3時間後の日本時間19日4時12分、無事ドッキングに成功した。

ソユーズMS-21には、オレーク・アルテーミエフ(Oleg Artemyev)宇宙飛行士、デニス・マトヴェーエフ(Denis Matveev)宇宙飛行士、セルゲイ・コルサーコフ(Sergey Korsakov)の3人のロシア人宇宙飛行士が搭乗していた。

3人は今年9月25日までの195日間、宇宙に滞在する予定となっている。

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    ソユーズMS-21を載せたソユーズ2.1aロケットの打ち上げ (C) NASA

アルテーミエフ宇宙飛行士は1970年、ラトヴィア・ソビエト社会主義共和国生まれ。1998年にバウマン記念モスクワ国立工科大学を卒業後、RKKエネールギヤで船外活動服の開発に従事した。そして2003年に宇宙飛行士候補として選抜、2005年7月に宇宙飛行士に認定された。

2013年から2014年にかけて、第39次/第40次長期滞在クルーとしてISSに滞在。また2017年から2018年にかけて、第55次/第56次長期滞在クルーとしてISSに滞在した。

今回が3回目の飛行で、今ミッションではコマンダーを務める。

マトヴェーエフ宇宙飛行士は1983年、ロシア生まれ。2006年にバウマン記念モスクワ国立工科大学を卒業したのち、ロシアの宇宙飛行士訓練センター(星の街)に勤務。2010年に宇宙飛行士候補として選抜され、2012年に認定された。

今回が初飛行で、フライト・エンジニアを務める。

コルサーコフ宇宙飛行士は1984年、キルギス・ソビエト社会主義共和国生まれ。2006年にバウマン記念モスクワ国立工科大学を卒業したのち、2012年に宇宙飛行士候補として選抜され、2014年に認定された。

今回が初飛行で、フライト・エンジニアを務める。

3人は奇しくもバウマン記念モスクワ国立工科大学の同窓生であることから、今回の打ち上げには「バイマンスキー・スタールト(バウマンの打ち上げ)」という愛称が与えられた。ミッション・パッチも、同大学の記章をオマージュしたものとなっている。

また、同大学はソ連の宇宙開発の父と称されるセルゲイ・コロリョフ氏の出身校でもあることから、ソユーズMS-21には特別に「コロリョフ号」という愛称も与えられている。

ロシア人宇宙飛行士3人がソユーズでISSを訪れたのは、今回が初となる。これまではロシア人宇宙飛行士2人と米国や欧州、日本などの宇宙飛行士1人、あるいは宇宙飛行参加者や宇宙旅行客といった宇宙飛行士の資格をもたない人との組み合わせばかりだった。

今回のミッションはもともと、NASAとロスコスモスの間のバーター(物々交換)協定に基づき、ソユーズに米国の宇宙飛行士を、その代わりに米国の宇宙船にロシアの宇宙飛行士を搭乗させることになっていた。しかし、合意に達せず、最終的に全員ロシア人宇宙飛行士のミッションとなった。なお、この決定は2021年に行われたものであり、ウクライナ情勢とは関係はない。

また、ミール宇宙ステーションの時代を含めると、3人全員がロシア人宇宙飛行士のソユーズのミッションは22年ぶりとなる。

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    国際宇宙ステーションに接近するソユーズMS-21 (C) NASA

黄色と青の服でウクライナへの連帯を表明か?

今回のミッションは、ロシアによるウクライナへの侵攻が続く中で行われたことで、さまざまな物議を醸すことになった。とくに、欧米などがロシアに経済制裁を課し、ロシアがそれに反発。ロスコスモスのロゴージン総裁がISSからの離脱もほのめかしたことから、一時は打ち上げが行われない可能性も取り沙汰された。

打ち上げが予定どおり行われたことは、ロシアとしては少なくとも現時点では、ISSに関与を続ける意思があるものとみられる。

また、アルテーミエフ宇宙飛行士らがソユーズからISSに入船した際、黄色と青の服を着ていたことも話題となった。黄色と青は、ウクライナの国旗の色でもあることから、「ウクライナへの連帯を表しているのでは」との見方が、米国の宇宙飛行士をはじめ、多くの人からなされた。

とくに、彼らの上司でもあるロゴージン総裁は、プーチン政権やこの戦争におけるロシアの正当性を強く支持していることから、上層部への反発も込めた、強いメッセージの表れともされた。

もっとも、アルテーミエフ宇宙飛行士はその後、「この服は、好きな色を選ぶことができます。今回の私たちの飛行は、バウマン記念モスクワ国立工科大学とのさまざまな強いつながりを記念したものです。そのため、私たちは大学の記章と同じ配色の服を着ることにしました」とコメントしている。

実際、同大学の記章は、黄色と青から構成されている。

また、「服は飛行の約6か月前には準備します」と続け、侵攻が始まってから準備することは時間的に不可能とも説明。

そして「色はただの色です。今回着ていた服は、ウクライナとは何の関係もありません。もし、あらゆる色に意味を求めるのなら、空の青、太陽の黄色にも意味を問わなければならないでしょう。私たちは宇宙から、大統領や人々とともにあります」とコメントしている。

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    バウマン記念モスクワ国立工科大学の記章(左)と、今回のミッション・パッチ(右) (C) BMSTU/Roskosmos

参考文献

Russian Trio Launches on Express Trip to Station - Space Station
Roskosmos VK
Kosmonavt Oleg Artemyev
Soyuz MS-21 to go to ISS amid Russian invasion of Ukraine