サントリー食品インターナショナルは3月30日、都内で記者説明会を開き、法人が抱える経営課題に対して自販機で貢献するため3つの領域で法人向け自販機サービスの拡張を行うと発表した。

自販機市場が縮小傾向でもシェアアップを実現するサントリー

同社では従来から法人向けに飲料自販機に加え、カップ自販機・給茶機・ウォーターサーバーなどのフルライン機材の提案を行っていたほか、飲料自販機を活用した法人向けサービスとして、コミュニケーション活性化を目的とした「社長のおごり自販機」や健康経営をサポートする「SUNTORY+」も展開している。

今回、法人が抱える(1)コミュニケーション活性化、(2)職場環境充実、(3)健康経営サポートの3つの経営課題に対して、新たな提案を行うためサービスを拡張する。

  • 法人が抱える3つの課題

    法人が抱える3つの課題

コミュニケーション活性化では、社長のおごり自販機の全国拡大を開始し、職場環境の充実については新サービス「ボスマート(軽食販売自販機)」の開始、健康経営サポートに関しては新サービス「DAKARA給水所(熱中症対策自販機)」を開始する。

サントリー食品インターナショナル VM事業本部マーケティング部の須野原剛氏は「自販機市場は厳しい事業環境に置かれ、徐々に縮小傾向にあるが当社はシェアアップを実現している。これは、既存台の売り上げを落とさないようにマーチャンダイジング(MD)を進化させていることに加え、新たな成長エンジンとして法人向けサービスの革新が挙げられる」と述べた。

  • サントリー食品インターナショナル VM事業本部マーケティング部の須野原剛氏

    サントリー食品インターナショナル VM事業本部マーケティング部の須野原剛氏

MDの進化では、過去最多の新商品を発売しており、品揃えに関してはAIを活用した最適化のシステムを開発し、プロモーションでは自販機限定のデジタルキャンペーンを実施している。

一方、法人向けサービスは直接サービスを提供できる特別な接点ではと捉えているものの、同社の調査によると半数以上が外からの持ち込みとなっており、オフィス内の飲料消費は自販機が2割弱しか獲得できていないという。

この点について、須野原氏は「まだまだ努力が足りていないが、逆の発想として真摯に取り組めば伸びしろがあるのではないかと考えている。飲料を販売するだけの“鉄の塊”ではなく、法人、従業員に選ばれる付加価値を持った自販機へのモデルチェンジを図らなければならない。そのために技術開発を強化し、法人の経営課題を解決するサービス自販機を続々と開発している」と説明した。

社長のおごり自販機を全国に拡大

社長のおごり自販機は、昨年10月から首都圏エリアでサービスを開始していたが、首都圏外からも300社以上(首都圏外からは60社以上)の設置要望があることから、5月から全国に拡大する。また、社員証を導入していない法人に向けて「社長のおごり専用カード」(有料)も新たに用意した。

  • 5月から「社長のおごり自販機」を全国に拡大する

    5月から「社長のおごり自販機」を全国に拡大する

  • 「社長のおごり専用カード」も新たに用意

    「社長のおごり専用カード」も新たに用意

同自販機の利用方法は、社員2人が自販機の対象部分に2枚の社員証を同時にタッチすることで各1本ずつ飲み物を無料で受け取れ、サービス分の飲料費用は法人負担となり、現時点ではサントリービバレッジソリューションの自販機のみがサービス対象となっている。

社長のおごり専用カードは、社員証を導入していない法人に向けて社長のおごりカードで購入を可能とし、同カードを購入し、従業員に配付することで社長のおごり自販機を利用できる。

なお、同自販機は要望に応じてカード1枚当たりの上限本数/日、対象時間・曜日の設定(ex.クリエイティビティを活性化させたい午前中をサービス対象時間に設定)、「〇〇のおごり」へのポスター内の文言(ex.「社長のおごり」→「工場長のおごり」)の設定・変更が可能。当初、2022年に100社への導入を計画していたが、200社に上方修正し、2023年には500社(1000台)への導入を目指す考えだ。

  • 目標を上方修正した

    目標を上方修正した

飲料に加え、軽食も販売する「ボスマート」

ボスマートは、職場環境の充実を目的とした、法人向けの軽食販売サービス。オフィスや工場で働く企業から「近くに売店がなく不便」「隙間時間に小腹を満たしたい」といった要望がある一方で、軽食サービスの導入を検討する法人からは「お金の管理が不安」「出入業者を増やしたくない」といった懸念の声があったという。

そこで、自販機をセルフレジとして活用することで気軽にオフィスで飲料と軽食販売が導入できる特許登録済みのセルフレジプログラムを開発したことに加え、自販機内の冷蔵庫の部屋数は30、ボタン数は36のため余剰ボタンをレジボタンにに活用し、ボスマートを開発。

  • 「ボスマート」の外観

    「ボスマート」の外観

利用方法は、自販機横の棚から商品を選び、自販機にお金を投入して、選んだ商品のボタンを押して決済(現時点ではサントリービバレッジソリューションの自販機のみがサービス対象)となる。

飲料に加え、軽食から菓子までのラインアップを揃え、導入費・月額費は無料となり、商品・代金管理を不要とし、現金盗難リスクもないという。すでに、テスト導入で8000台(2021年末時点)を導入し、2023年には1万2000台の導入を計画している。

熱中症対策にフォーカスした「DAKARA給水所」

DAKARA給水所は、健康経営のサポートの一環として熱中症対策を目的とした、法人向けサービス。工場などの高温作業所において熱中症対策は重要な取り組みの1つとなっている。

企業からの「従業員に飲料が行き届いているか確認したい」「冷えた温度で配布したい」などのニーズに対応するため自販機と専用カードを使用することで、利用状況の確認(個人情報に関する契約が必要)ができ、簡単に冷えた状態で飲料配布ができる新サービスを開発した。

利用方法は自販機の対象部分に1枚の専用カードをタッチすることで、飲み物を1本無料で受け取れる(サービスのカード代、飲料費用は法人負担、現時点ではサントリービバレッジソリューションの自販機のみがサービス対象)。

同サービスは、導入費は専用カード代のみで月額費は無料となり、商品・代金管理は不要、対象商品の指定(熱中症対策商品のみなど)や対象時間・曜日の設定、カード1枚当たりの上限本数/日の設定を可能としている。2023年に100台の導入を目指す。

  • 「DAKARA給水所」の概要

    「DAKARA給水所」の概要

そのほかの法人向け新サービスとしては、専用カードの使用による飲料提供方法を活用した「来客用自販機」についても同時にサービスを開始する。これは、来客者を対象に飲料を手軽に提供することを目的とした法人向けのサービス。

来客者に専用カードを渡すことで、手軽に飲料を提供でき、オフィスの応接対応に加え、ホテルのウェルカムドリンクにも活用を可能(サービスのカード代、飲料費用は法人負担、現時点ではサントリービバレッジソリューションの自販機のみがサービス対象)としている。

  • 来客用自販機の概要

    来客用自販機の概要

最後に須野原氏は「2022年は特に法人向けの自販機サービスの展開に注力し、3つの経営課題の解決に貢献していく。サービスを通じて、あらゆる法人のオフィスを“自販機でちょっとハッピー”にしていきたいと考えている」と力を込めていた。