科学技術振興機構(JST)は2022年3月30日に、現理事長の濱口道成氏が3月31日付けで任期満了として退任し、4月1日付けで橋本和仁氏が新理事長として就任すると発表し、橋本氏が記者会見に応じた。
橋本氏は3月31日まで、物質・材料研究機構(NIMS)の理事長を務め、4月1日付けでJST理事長に就任する。
橋本氏は記者会見で「2022年4月からJSTの第5期中長期計画が始まる中で、引き続き科学技術・イノベーション基本計画の中核を担う機関として、日本の研究開発を進め、科学技術・イノベーション基盤の強化に努めていく」と語った。
そして「JSTは大学や公的研究機関などの研究を支える研究費を援助するファンディング・エージェンシーして、最先端研究を支えていく」とした。
大学や公的研究機関などの若手・中堅研究者は、まず日本学術振興会(学振)の科学研究費助成事業による“科研費”を受けて、その分野で優れた研究成果を上げることを目指す。橋本氏は、この時点での研究が、将来の事業化などを想定した仮想価値の“1”段階にあるとした上で、「JSTはこの仮想価値“1”の研究成果から“10”まで育て上げる研究開発費を援助するファンディング・エージェンシーとして活動することが本務となる」と解説した※1。
また、橋本氏は、仮想価値を“10”にまで育てるファンディング・エージェンシーとしてJSTが活動するためには「シンクタンク機能を高め、近未来社会を支える基盤研究を見極める目利き機能が必要不可欠」と指摘。現在、JSTには研究開発戦略センター(CRDS)と呼ばれている部局があり、日本の科学技術イノベーション政策に関する調査、分析、提案などを中立的な立場で行うシンクタンクとして機能している。このCRDSの機能拡充を図る計画があるようだ。
さらに、橋本氏はJST職員のキャリアアップとして、「研究成果の将来の価値を見極めるリサーチ・アドミニストレーター(URA)として、各大学や公的研究機関の研究者の研究内容・成果を政策立案組織に伝える機能を高めることを進めたい」と語った。
そして、「2022年3月から稼働している“大学ファンド”(10兆円規模)の運用を進めて、日本の“研究大学”が世界に肩を並べる研究成果を上げる支援を進めたい」という。同時に、JSTが担っている「若手研究者支援の創発的研究支援制度や博士課程の学生が挑戦的・融合的な研究成果を上げる支援策の次世代研究者挑戦的研究プログラムなどの人材育成策を拡充していく」と続けた※2。
さらに、この一環として内閣府が進めている「地域の中核となる大学振興パッケージ」に基づく中核となる大学の支援策も拡充したいという。
文中注釈
※1 橋本氏は、仮想価値“10”から“100”まで育て上げるファンディング・エージェンシーは新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の役割だとも解説した。
※2 若手研究者支援の創発的研究支援制度については「JST、創発的研究支援事業に採択された若手研究者252人を公表」を参照