日立製作所(日立)とNTTドコモ(ドコモ)は3月30日、SA(スタンドアローン)方式の5G環境下で、AR(拡張現実)技術を活用した組み立て作業支援のアプリケーション「AR組み立てナビ」が安定稼働できるかを確認する実証実験を実施したことを発表した。

現在、技術開発中の同アプリは、作業現場の映像データをAI(人工知能)でリアルタイムに分析・判断し、作業台上にプロジェクターから作業者がとるべき行動をプロジェクションマッピングで表示することができる。

このような映像データをリアルタイムで分析・活用する取り組みでは、現場での物理的な配線や設備を考慮せずに導入できる無線、かつ大容量・低遅延に処理を行えるエッジコンピューティングの環境が求められるという。

  • ARを活用した組み立て作業支援実証

今回、日立の研究開発拠点「協創の森」にて、ドコモが提供する5Gサービスと「ドコモオープンイノベーションクラウド」を用いてエッジコンピューティングの実証環境を構築し、実証を行った結果、4G LTEでは満たせなかった同アプリの安定稼働のための許容条件をクリアできることを確認したという。

実証実験ではまず、AR組み立てナビをドコモオープンイノベーションクラウド上で稼働し、協創の森の実証環境とドコモオープンイノベーションクラウドを5Gサービスで接続した。また、高い信頼性や安定性を確保するため、日立が開発した5Gハンドリングミドルウェアを用いて、パケットを複製してメイン回線のSA方式の5Gとバックアップ回線のNSA方式の5G双方で伝送し、二重化した。

  • 実証実験の構成イメージ

次に、ドコモオープンイノベーションクラウドでAR組み立てナビを稼働し、前工程の作業完了を検知してから次工程の作業指示を投影するまでの応答時間を測定することにより、アプリケーションが実用に耐えられるかを検証。

具体的には、組み立て業務に支障を与えない応答時間として3秒以下を目標として設定した。検証の結果、応答時間は目標値以下の1.5秒であり、実用に耐えられることを確認。この結果は、4G LTEを使った評価の4.2秒に比べると2.7秒の応答時間の短縮であり、さらに複数の作業指示からなる工程全体では40%の生産性向上になるという。

また、5Gハンドリングミドルウェアを用いることで、SA方式の5G通信に遅延があった際もバックアップ回線であるNSA方式の5G通信からデータが届き、通信が途切れることなく、AR組み立てナビを安定稼働できることを確認したとのこと。

日立とドコモは今後も連携し、今回の実証実験の成果も活用しながら製造業や社会インフラ分野のDX実現を支援していく考えだ。