東京都医学総合研究所(医学研)は3月25日、東京都の依頼に基づき、都立病院関係者の検体(血清)を用いて、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチン接種後7か月程度経過した人の抗体を測定した結果を発表した。
同成果は、医学研 感染制御プロジェクトの小原道法特別客員研究員らの研究チームによるもの。
今回の測定は、ファイザー社製mRNAワクチン2回接種終了後、7か月程度が経過し、同意を得られた都立病院関係者で、主に20才代から70才代までの1139人の検体(血清)が用いられた(検体は都立病院関からの提供)。
測定は、SARS-CoV-2の表面タンパク質であるスパイクタンパク質(S1)に結合する抗体と、ウイルスの感染を防ぐ効果の有る中和抗体について、精密測定系(化学発光免疫測定系:CLIAなど)を用いて実施された。通常、SARS-CoV-2検査はPCR検査が行われているが、既往感染を容易に判定可能な抗体検査法が用いられた。
測定の結果、S1結合抗体価(S1-IgG)の平均値は176AU/mL(抗体の濃度を示す単位)で、年齢が高くなるに伴って低い値となることが確認されたとした。この抗体価は、医学研が保有している22例の2回目ワクチン接種2~4週間後の抗体価の平均値2608AU/mLと比較すると約15分の1という低さだったという(10AU/mL以上が抗体陽性となる)。
中和抗体価(Nab)の平均値は55.8AU/mLで、年齢が高くなるに伴って低い値となり、医学研が保有している15例の2回目ワクチン接種2~3週間後の抗体価の平均値729AU/mLと比較すると約13分の1に低下していた(10AU/mL以上が抗体陽性となる)。
なお、これらの抗体測定には、流行初期株のスパイクタンパク質抗原が用いられており、検査が実施された時点での流行の主体だったデルタ株に対しては、中和抗体の効果が減少する可能性が示唆されるとしている。