スノーフレイクはこのほど、今年4月に改正個人情報保護法が施行されることに伴い、注目を集めている「データクリーンルーム」に関する勉強会を開催した。「データクリーンルーム」は個人情報を保護しながらさまざまなデータへのアクセスやコラボレーションを可能にするものだ。

CARTA COMMUNICATIONSの行った調査によると、データクリーンルームに対しては、「1st Partyデータ構築、データクリーンルームを用いた分析の構築」や「企業戦略を含めたビジネスコンサルティング領域」などが期待されているという。

スノーフレイクは同社が提供しているデータクラウド「Snowflake」上でデータクリーンルームの構築を実現している。

「個人関連情報」と「仮名加工情報」

日本に限らず、グローバルで個人情報の保護を強化する動きが高まっているが、執行役員セールスエンジニアリング統括本部長の井口和弘氏は、「グローバルで、規制しながらも活用していく方向にあり、Appleのモバイル広告IDが終了するなど、同意が不十分な状態で活用するのを避ける動きが出てきている」と語った。

  • スノーフレイク 執行役員セールスエンジニアリング統括本部長 井口和弘氏

井口氏は、2022年4月施行の改正個人情報保護法における変更点のうち、、「個人関連情報」と「仮名加工情報」に絞って説明を行った。

個人関連情報とは、生存する個人に関する情報で、個人情報、仮名加工情報及び匿名加工情報のいずれにも該当しないものを指す。提供元に本人同意の確認が義務付けられている情報としては、以下がある。

  • Cookie 等で収集された個人のWebサイトの閲覧履歴
  • 個人の商品購買履歴やサービス利用履歴
  • 個人の位置情報

一方、仮名加工情報とは、他の情報と照合しない限り、特定の個人を識別できないように個人情報を加工して得られる個人に関する情報を指す。データを加工することで、以下の義務の適用が除外される。

  • 利用目的の変更の制限
  • 漏えい等の報告・本人への通知
  • 開示・利用停止等の請求対応

さらに、今回の改正で追加されたものではないが、データ活用のカギとなる情報に匿名加工情報がある。これは、特定の個人を識別できないように個人情報を加工し、当該個人情報を復元できないよ うにした情報だ。

匿名加工情報は、加工すれば一定のルールの下で利用目的による規制をなくし、本人の同意を得ることなく第三者提供を可能とする。

個人データ活用の課題を解消

井口氏は、個人情報のデータ活用において求められる処理として、「仮名化、匿名化への対応」「他部門や外部とのデータ共有」「データマッチングやセグメンテーション」「AIや機械学習への活用」を挙げた。

一方、個人情報のデータ活用においては、以下のような課題が生じているという。

  • データの複製と共有によって複雑性が増してセキュリティやトレーサビリティが低下
  • 大量のデータの複製、加工、転送による手間や時間の増大
  • セカンドパーティ、サードパーティの大量データの効率的な分析

データクラウド「Snowflake」では、こうした課題を解消するという。具体的には、データクラウドにデータを保管すると、データマーケットプレイス(オープンデータのためのストア)で活用されるため、匿名化情報の作業やデータベースへのインポートなどの手間が省ける。また、1stパーティ同士で連携されるため、データをコピーすることなくクラウド越しにデータにアクセスすることができる。

  • データクラウドにおけるデータの共有とコラボレーション

SNOWFLAKEデータマーケットプレイスでは、200以上のプロバイダーが提供する16以上のカテゴリーのデータやサービスを閲覧可能なほか、最新のデータにアクセスすること、データ更新を自動受信することなどが可能だ。

データクリーンルームの課題とは?

続けて、井口氏は現在のデータクリーンルームのソリューションは「安全ではなく、リスクがあり、価値も低い」と述べ、典型的なデータクリーンルームの課題として、「データの陳腐化」「データの移動に伴うコストの増加」「データの保存に伴うリスクの増加」「データの分析における価値の低下」を挙げた。

これに対し、「Snowflakeのデータクリーンルームなら、セキュアかつ簡単、 強力にデータを活用できる」と井口氏は述べた。なぜなら、Snowflakeのデータクリーンルームでは、クラウドのオブジェクトストレージに一度自社のデータの仮名化・匿名化を行って落とし、それを相手にダウンロードしてもらうといったことが一切不要だからだという。また、データクラウドはデータベースになっているので、SQLで分析したり、機械学習で処理したりと、直接分析が行える。

さらに、井口氏は同社のデータクリーンルームの強みとして、ありとあらゆるデータを対象にできることを紹介した。他社はデータクリーンルームに特化したソリューションを開発しているという。

データクリーンルーの利用例として、広告枠のダイレクト販売が紹介された。メディアは、プライバシー保護、リアルタイム、スケーラブルなソリューションで広告枠を販売するためにデータクリーンルームを利用するという。また、ブランド・広告主はデータクリーンルームを利用することで、広告費用対効果の予測精度が向上し、タイムリーかつ詳細なアトリビューション分析が可能になるという。