さくらインターネットは3月24日、IoTシステムの構築を支援するサービス「さくらのモノプラットフォーム」の提供を発表した。同サービスは、IoTシステムの構築を支援する「プラットフォーム」とIoTデバイス開発のための「設計情報」に加えて、マルチキャリアに対応した「通信回線」を提供するPaaS(Platform as a Service)だ。
費用はプラットフォーム、および通信回線の月額利用料金(税込)がかかる。初期費用や事務手数料は発生しない。プラットフォームの月額利用料金は1デバイスあたり220円だ。オプションの「外部サービスとの連携」機能の利用料金は1デバイスあたり月額11円で、「ファイル送受信」機能はプラットフォームのストレージ内に格納されたデータの最大容量に対して課金され、金額は月額110円となる。
なお、プラットフォームとの通信が発生していないIoTデバイスには課金されない。そのため、製造後、利用開始まで在庫として保管しているデバイスや、一時的に利用を停止しているデバイスではプラットフォームの月額費用が発生しない。
同日には記者発表会が開かれ、IoTプラットフォーム事業部 部長の竹井清恭氏が「技術・ビジネス・人・物をひとつにつなげるIoTの道具箱」という同サービスのコンセプトを紹介した。
竹井氏は、「当社が提供する道具箱から、必要に応じて最適な道具を使っていただくイメージだ。IoT製品やIoTシステムの開発においても、ソフトウェア開発のようなオープンな開発環境を拡げていきたいと考えており、汎用的に使えるプラットフォーム、設計情報、通信回線の共有を進めることで、モノづくり企業が本来取り組みたい課題に注力できる環境を実現したい」と語った。
プラットフォームでは、「登録」「認証」「編成」「監視」といったIoTデバイスの管理機能のほか、IoTシステムの構築や運用に必要となるデータの中継・拡張機能を提供する。各機能は、Webブラウザ上の「コントロールパネル」と、管理自動化が可能な「API」を通じて提供される。
設計情報では、ハードウェアの開発キット、デバイスSDK、クラウドSDKを提供する。これらはオープンソースライセンスであるMITライセンスの下で公開するので、ユーザーは商用利用も含め、ライセンスの範囲内で設計情報を複製、変更、掲載、頒布することが可能だ。
開発キットではDIP型LTEモジュール基板やM5Stack向け変換基板など、IoTデバイスの電気設計に役立つ設計情報について、仕様書や設計データも含めて無償で提供する。デバイスSDKにはインターフェース仕様書やハードウェア向けの通信ライブラリ、実装例が含まれる。クラウドSDKでも、インターフェース仕様書やクラウドアプリケーションの実装例を提供する。
通信回線については、現状ではさくらインターネットの閉域型ネットワークサービス「さくらのセキュアモバイルコネクト」を提供するが、将来的には、同サービス以外の通信回線を経由した利用にも対応する予定だ。
従来のIoTにおける通信では、アプリケーションが必要とする通信プロトコルやデータ形式をデバイス側で実装する必要があるが、「さくらのモノプラットフォーム」では、デバイス側ではプラットフォームにデータを送信する機能のみ実装すればよく、アプリケーション側のプロトコルはプラットフォームで対応する。
プロダクトマネージャーの小田島太郎氏は、サービスの特徴について、「データ形式もデバイス側はバイナリ形式、アプリケーション側ではあつかいやすく可読性の高いJSON形式にしており、プラットフォームで相互変換を行う。また、従来はデバイスやアプリケーションが増えると『組み合わせ爆発』が発生しかねないが、当サービスでは、デバイスはプラットフォームと一度だけ通信すればよく、複数のアプリケーションとの通信はプラットフォーム側で処理する」と解説した。
なお、デバイスがオフラインの場合は、プラットフォームでデータを滞留させておき、オンラインになった時点でデバイスからデータを取得することが可能だ。
「特定のハードウェア、OS、言語、通信方式に依存しないオープンな設計コンセプトとしている。Linuxが動作するようなリッチなマシンでも利用可能だ。Nordic社のNRF9160というIoT向けのLTEモジュールで動作確認済みだ」(小田島氏)
さくらインターネットは、すでに「さくらのセキュアモバイルコネクト」やIoT開発を支援する「sakura.io」を提供している。だが、sakura.ioでは専用モジュールを利用するためスケーラビリティに課題があり、さくらのセキュアモバイルコネクトでは、ユーザー企業側でデバイスやクラウドの設計や開発が発生してしまう。
そのため、専用モジュールを用いない統合されたプラットフォームを、設計情報や通信回線と併せて提供することで、企業のIoTシステムの構築作業の削減とコスト抑制、スケーラビリティを支援するねらいだという。
プロダクトマーケティングマネージャーの西田有騎氏は、「現状、IoTの持つ技術的な難しさや専門人材の必要性から、まだ本格的なIoT普及に至っていないと考える。設計難易度の高さからアウトソースするとコストが高騰し、開発期間の長期化も避けられない。だが、今後もIoT市場の成長は見込まれ、成長を後押しするようなサービスが必要と考えた」と明かした。
今後、さくらインターネットはデータの到達確認や保存・可視化といった新機能を追加するほか、LPWA(Low Power Wide Area)技術をあつかうベンダーや、IoTデバイスおよびクラウドアプリケーションの設計開発会社など、さまざまなパートナーを募ってサービスを拡充していくという。