新型コロナウイルス変異株のオミクロン株に感染した子どもは、流行初期やデルタ株流行期と比べて発熱やけいれんの症状が増える一方、重症化率は流行株を問わず大人より低い――。こうした傾向があることが、日本小児科学会が16歳未満の子ども5000人以上を対象にした調査結果で明らかになった。
厚生労働省によると、15日までの1週間で10歳未満の感染者は7万人を超え、全体の約20%を占めた。23日開かれた「厚生労働省に新型コロナウイルス感染症対策を助言する専門家組織」は「新規感染者における10代以下の割合は増加傾向が続き、依然として高い水準」と分析した。
多くの自治体が3月から、11~15歳のワクチン接種を始めている。接種するかどうかについては子どもや保護者の間では戸惑いの声も聞かれる。健康なこの年齢層へのワクチン接種について同学会は「意義がある」としつつ、接種のメリットとデメリットを子どもと保護者が十分理解する必要があると指摘している。
日本小児科学会の調査結果は、長崎大学大学院医歯薬学総合研究科・小児科学の森内浩幸教授が15日の厚労省への助言専門家組織会合で報告した。それによると、2020年2月~今年2月に小児科学会のデータベースに登録された5129人(0~15歳)を対象に、「流行初期」(20年2月~21年7月)、「デルタ株流行期」(21年8月~12月)、「オミクロン株流行期」(22年1月~2月)の3期間で感染状況に違いがあるかどうかを調べた。
年齢層を1歳未満、1~4歳、5~11歳、12~15歳の4段階に分けて比較した。その結果、発熱の頻度は流行初期では4割程度だったが、オミクロン株流行期では8割に増えた。また熱性けいれんは好発年齢の1~4歳を見ると、流行初期、デルタ株流行期の頻度はそれぞれ1.3%、3.0%だったのに対し、オミクロン株期では9.4%に増加していた。5~11歳の年長児でも、初期とデルタ株期はそれぞれ0.4%、0%だったが、オミクロン株期になると3.5%に増えていた。
このほか、のどの痛みは初期やデルタ株期ではあまり目立たなかったが、オミクロン株期の頻度は26.1%まで増加。吐き気、嘔吐(おうと)も初期やデルタ株期では多くなかったが、オミクロン株期は増え、中でも5~11歳では14.5%になり、よく見られる症状になっていた。
一方、心配な肺炎については初期1.1%、デルタ株期1.6%、オミクロン株期1.3%とほとんど変化がなく、流行株を問わず大人と比べても発症頻度は低かった。味覚、嗅覚障害も大人と同様に、オミクロン株期ではほとんど見られなかった。
5~11歳のワクチン接種について日本小児科学会の予防接種・感染症対策委員会は1月19日付で4項目の考え方を示している。この中ではまず、子どもの感染を防ぐためには周囲の大人のワクチン接種の重要性を強調。その上で基礎疾患がある子どもへの接種は「重症化を防ぐことが期待される」とし、接種後の健康管理などについて主治医と養育者(保護者)が事前に相談することが望ましい、としている。
また健康な5~11歳についても「12歳以上の健康な子ども同様に意義があると考える。発症予防などのメリットと副反応などのデメリットを本人と保護者が十分理解し、接種前・中・後にきめ細かい対応が必要」としている。
関連記事 |