中部大学と大阪大学(阪大)は、安価な酸化鉄の水分散液に、電磁波の一種であるガンマ線を照射するだけで電気を取り出すことが可能な技術を開発したと発表した。
同成果は、中部大 応用生物学部 応用生物化学科の堤内要教授別、中部大工学部 創造理工学実験教育科の橋本真一教、阪大 産業科学研究所の室屋裕佐准教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、3月23日~26日までオンライン開催中の日本化学会 第102春季年会(2022)で発表された。
振動や廃熱など、身の回りの未利用なエネルギーを電気に変えて利用するエネルギーハーベスト(環境発電)の技術開発が進められているが、研究チームはそうした未利用のエネルギーの中でも、原子力発電所の使用済み核燃料からも発生し、一般的には放射線として知られているガンマ線に着目し、単純なシステムで繰り返し電気を取り出すことが可能であることを確認したという。
具体的には、水に分散させた粒径数nmの酸化鉄の一種「マグネタイト」(Fe3O4)粒子に、ガンマ線を照射することで、水の電離によって酸化された過酸化水素(H2O2)などの活性酸素種が発生。マグネタイトが電子を取り込むことで、還元されることが判明したことから、分散液に電極を設置し、磁石を近づけて酸化鉄ナノ粒子を片側の電極近傍に集めて電極を配線でつないだところ、電気が流れることが確認されたという。
放電が終わったところで、鉄を分析すると還元されていた鉄が酸化されていることが判明。再びガンマ線を照射して同様の操作をすると、再び電気が流れることも確かめられたとのことで、これらの結果から、酸化鉄の水分散液にガンマ線を照射して磁石を近づけたり遠ざけたりするだけで、繰り返し発電するシステムを作り出せることが明らかとなったとしている。
なお、今回の実験では医療や工業用に利用される放射性同位元素のコバルト60から発生するガンマ線が用いられたが、今後、たとえば原子力発電所の使用済み核燃料貯蔵設備に組み込むことで、現在は未利用のガンマ線からの発電も可能になることが期待されると研究チームでは説明している。