富士通、東洋大学、尼崎市は3月24日、複雑化かつ巧妙化する特殊詐欺の撲滅に向けて、AI(Artificial Intelligence:人工知能)と犯罪心理学を組み合わせたコンバージングテクノロジーを活用して特殊詐欺を未然に防止する共同研究を開始したことを発表した。被害者の判断力が低下していないのかなど、心理状態を推定して可視化するという。
今回の共同研究では特殊詐欺被害の未然防止に向けて、富士通のAIを活用したヒューマンセンシング技術と、東洋大学の犯罪心理学に関する研究成果を組み合わせたコンバージングテクノロジーを活用する。
共同研究にあたって、富士通と東洋大学は兵庫県警察協力のもとで、特殊詐欺の音声から特殊詐欺特有のキーワードとパターンを分析し、実証実験で使用する特殊詐欺シナリオを事前に作成したという。
このシナリオに基づいて、尼崎市在住の高齢者数十名(協力者)を対象に特殊詐欺グループを装って電話をかけ、富士通が開発したカメラ映像から人の行動を認識するAI技術、顔の表情から感情などを推定する表情認識AI技術、顔の画像からリアルタイムに脈拍を推定するAI技術を用いて、協力者の顔の表情や脈拍などのデータをカメラやセンサーで捉える。さらに、事後アンケートにより電話応対中の心理状態を把握するとのことだ。
東洋大学は協力者のセンシングデータとアンケート結果から心理状態と身体状態の関係性を分析する。富士通は分析結果をもとに還付金詐欺を検知する特殊詐欺推定AIモデルの構築を進め、2022年度上半期には2回目の実証実験を予定している。また、2022年度中に特殊詐欺全般を高精度に検知する特殊詐欺推定AIモデルの開発を目指すという。